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土地売買は見えない部分も要注意!工事前にはわからない「地下の埋設物」撤去負担は買主?売主?

条件に合った土地が見つかって購入し、やっと工事に入ったら地下に何か埋まっていて、工事に支障が出てしまった。どう対処するかで売主との話し合いが必要になり、場合によっては訴訟に……。弁護士の長町真一先生によれば、そんなトラブルも珍しくはないそうです。買主としては立地や土地の広さ、日当たりなど目に見える部分だけでなく、地下のことも目を配る必要があるとのこと。では具体的にどんなケースがあり、何にどう注意すればよいのでしょうか。

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弁護士が教える 土地売買は見えない部分も要注意!工事前にはわからない「地下の埋設物」撤去負担は買主?売主?

条件に合った土地が見つかって購入し、やっと工事に入ったら地下に何か埋まっていて、工事に支障が出てしまった。どう対処するかで売主との話し合いが必要になり、場合によっては訴訟に……。弁護士の長町真一先生によれば、そんなトラブルも珍しくはないそうです。買主としては立地や土地の広さ、日当たりなど目に見える部分だけでなく、地下のことも目を配る必要があるとのこと。では具体的にどんなケースがあり、何にどう注意すればよいのでしょうか。

長町 友夫 先生

弁護士法人 御宿・長町法律事務所

代表パートナー
弁護士長町 真一 先生

平成16年弁護士登録 不動産をはじめ、金融・IT関連等多種多様な業種の顧問会社からの相談、訴訟案件を多数受任。クライアントのニーズに対し、早期解決、利益最大化を目指し、税務・会計にも配慮した解決方法を提案。経営者目線での合理的なアドバイスも行う。

LECTURE1

土地の売買で「見えないところにも気をつける」の意味とは

土地の売買契約を終えて工事を進めていたら、地下に埋まっているものが見つかることもあるとの話ですが、どんな物が埋まっていることが多いのでしょうか?

長町先生「過去の裁判例で問題となったのは、コンクリートガラ、杭、井戸、浄化槽、構造物、下水道管、地下室、遺跡などです。コンクリートガラなどはその土地に建っていた建物の解体時に出たと考えられ、当時の解体業者がそれらを適切に処理せず、そのまま埋めてしまった可能性があります。また杭も以前の建物の基礎工事などで使われていたものが撤去されずに残ってしまったのでしょう。このほか、以前に住んでいた人が使わなくなったものを埋めてしまったケースなどもあると思います」

やはりそういったものは工事を始めないとわからないのでしょうか?

長町先生「例えば、以前に大きな工場や倉庫があった土地などであれば、大きな柱や杭が地下に埋まっている可能性を事前に疑えるかもしれません。しかしこうした一部の例外を除いて、土地の売買契約前に気づくことは少ないでしょう。実際に埋設物が見つかるのは、ほとんどが購入後に建物を建てる基礎工事、あるいは以前の建物を解体する途中などのようです。特に契約時にまだ前の建物が建っている場合、埋設物を見つけることはさらに難しくなるでしょうし、工場や倉庫があった土地にしても、一般の方にそこまで気を回せというのは無理な話だと思います」

地下の埋設物が見つかった後、どのように対処できるかが大事になりますね。

長町先生「その通りです。まずは、埋設物を撤去する際の費用等は購入した買主が負担するのか、もしくは売主が負担するのかが問題になります。売買契約によっては、万一埋設物が発見された際に誰が撤去費用等を負担するのかを特約として定めてある場合もあります。こうした特約がない場合は、発見された当時の所有者である買主が原則として費用負担することとなります。もっとも、撤去費用等は高額にのぼることもあるため、買主としては、売主に瑕疵担保責任を問うことが考えられるでしょう。地下に事前に把握できなかった埋設物があったのだから、これは『隠れた瑕疵』にあたるとして損害賠償請求、または契約解除を行うものです。損害賠償の場合は埋設物の撤去費用(廃棄場への運搬費を含みます)、撤去作業で建築工事が遅れた際の遅延損害金相当額などを請求できる場合があります」

ではどういったケースなら売主や不動産業者に瑕疵担保責任を問えるのでしょうか。

長町先生「まず一定の条件から『瑕疵』と判断され、さらにそれが『隠れた』瑕疵であることが必要です(下表参照)。そして買主が『埋設物がある』との事実を知ったときから 1 年以内で、かつ売買契約から 10 年以内なら瑕疵担保責任を問うことができます。逆に 10 数年前に購入した土地で、最近になって建物を建てようと工事を始めたら埋設物が見つかったなどのケースは、瑕疵担保責任を問えなくなるケースがほとんどです」

長町先生「ただし注意したいのは、そうした埋設物が見つかったとき、基本的に売主の立ち会いのもとで確認しないと立証が難しくなる点です。現場の作業者は工事を進めたいので、埋設物は自分たちで早々に処分してしまうことが往々にしてあり、このような場合、買主は、いざ業者から処分費用等を請求され、売主に瑕疵担保責任を追及したくても、埋設物があったことを立証できなくなってしまうのです。とはいえ、売主の都合がつくまで工事を止める訳にもいかないでしょうから、自分で現場に行くなどして、埋設物の様子が分かるよう写真を撮っておくことをお勧めします。こうした証拠がないことで、売主と折り合いをつけるため損害賠償請求の金額を大幅に減額した話なども耳にします」

LECTURE2

埋設物があっても瑕疵に当たらないと判断されるケースも

瑕疵と判断されるためには条件がいくつもあるようですが、埋設物があっても瑕疵にあたらないことがあるという意味でしょうか?

長町先生「ええ、過去の裁判例でそうした判決がいくつも出ています。基本的に地下に土以外の異物が存在していても、買主に特に不利益を与えるものでなければ、瑕疵にはあたらないと判断されるのです。例えば、さほど大きくない構造物や地中の杭、下水道管などは、いずれも建築に大きな影響を与えないとして瑕疵にはあたらないと判断されています。だからといって、建築可能ならすべて瑕疵にあたらないとされる訳ではありません。この点に関する裁判例は多岐にわたりますが、埋設物が存在することで、建物の建築のために支障があり、埋設物の除去に特別の工事等を必要とする場合には、瑕疵に当たると判断される傾向にあります。なお、2020 年の民法改正では瑕疵担保責任が廃止され、契約不適合責任という概念に置き換わりますが、この場合も同じように考えられます」

しかし埋設物によっては、撤去もできないような状況ということがありませんか?

長町先生「埋設物が撤去できず、建築ができなかったり、建築できても当初の予定と大幅に異なることが見込まれたりする場合は、土地の売買契約をした目的が達成できないのですから、契約を解除することも考えられます。「目的を達成できない」場合に当たるかどうかは、技術的に撤去ができるかどうかに加え、経済合理性をも考慮して判断されます。例えば東京地裁の平成 20(2008)年 9 月 24 日の判決では、売買代金額に対比して過分な高額の処理費用を要することを考慮し、契約した目的を達成することができない』と判断しています」

ところで瑕疵担保責任以外に、こうしたトラブルに対処する方法はないのでしょうか?

長町先生「買主は売主に説明義務違反があったとして、債務不履行にもとづく損害賠償を請求することが考えられます(下表参照)。ただ、説明義務違反は、売主にも埋設物の存在について認識できたことが必要ですので、売主として把握のしようがなかった場合は損害賠償を請求することはできません。また、買主が埋設物があることを認識していた場合は、そもそも売主の説明が不要な場面ですから、やはり損害賠償請求はできません」

個人の売主であっても責任が問えるのはどのようなケースでしょうか?

長町先生「買主に対して虚偽の事実を告知したり、一定の前提の下であえて事実を告げなかったりしたなどの場合に説明義務違反が認められたケースがあります。東京地裁の平成15(2003)年5月16日の判決でも、個人の売主が説明義務違反とされたのですが、これは、売主が自ら業者に依頼して建物を建築しており、また解体や撤去も自ら業者に依頼して行っていたケースです。裁判所は『売主は、地中に埋設物が残置されているか否かについて容易に把握しうる立場にあり、買主から地中埋設物の存否の可能性について問い合わせがあったときは、誠実にこれに関連する事実関係について説明すべきであった』としています。これを怠り、買主が埋設物についての確認を行ったとき、その存在可能性を調査もせず、問題はないなど事実と異なる説明をしたことで、売主に説明義務違反を認めたのです」

LECTURE3

買主や売主が埋設物のトラブルを避けるためのポイントはコレ!

埋設物に関わるトラブルとその対処方法を伺ってきましたが、そうしたトラブルはできれば避けたいと誰しも考えていると思います。注意するポイントはどこでしょうか?

長町先生「まず買主も売主も、地下に埋設物がある可能性を十分に考えながら取引することでしょう。これを前提に、両者とも埋設物があった場合のことを売買契約書に記入しておくようにすれば、実際に見つかったときも対処がスムーズだと思います。買主は売主に購入の用途を示し、そのため『このようなことが瑕疵になる』と明確に規定し、売主に瑕疵担保責任を追及する旨を追加しておきましょう。これは2020年の民法改正後も同様と考えてよく、契約書の前文、確認規定、表明保証規定及び瑕疵担保責任(契約不適合責任)規定自体で、売買対象物に求める性質と、その性質に反する欠陥が何かを明示しておくことで、トラブル発生時にも、売主の責任を追及しやすくなると思います」

では売主としては契約時にどんなことに気をつけ、契約書にどのようなことを盛り込めばよいでしょうか。

長町先生「説明義務違反を負う可能性があるため、土地のこれまでの利用状況、周辺の状況などから埋設物があるのではないかと容易に推測できる場合には、契約締結時に買主に埋設物が存在する可能性を説明する必要があるでしょう。売主が積極的に調査をする必要はないのですが、以前は大きな建物があった土地なら、基礎に使われていた杭が埋まっている可能性は十分考えられます。また過去の裁判例では、土中に含まれた有害物質を隠れた瑕疵に当たるかどうかについて、以前に製缶工場があったことから、金属関係の有害物質が土中に含まれている危険は予測できたと判断したものがあります」

売主は可能なら売買契約前に地中調査を行い、埋設物を除去しておくと、売買後の埋設物のトラブルをある程度避けられるという訳ですね。

長町先生「仮にそこまでできない場合でも、埋設物が存在する可能性を告知し、撤去費用を売買代金に含んで契約を締結するなどの対応をしておけば、万一の場合の責任追及が大きくなることを防げると思います。また撤去に関しても、地下の杭は深さ2mまでは撤去するが、それより深い部分は建築に支障がないとして、売主は撤去費用を負担しないといった内容を契約書に盛り込むことも考えられるでしょう」

そのほか地下でトラブルになるといえばライフラインの埋設が考えられますが……。

長町先生「購入する土地が私道にしか面していないときは、公道に接する私道をはじめ各私道の所有者全員に掘削同意書に署名捺印してもらい、承諾を得ることが必要です。ただ最近は嫌がらせや不当な金銭要求のためか、買主としては納得のいかない理由で承諾してもらえないケースもあると聞きます。最終的には民事調停や裁判などで工事を進められる可能性は高いのですが、着工が大幅に遅れますし、また建築後も近隣との不仲が続くことが考えられるようなら、その土地の取得自体を再考した方がよいかもしれません」

そうした状況になったら所有者一人ひとりを回って説得してくれるなど、丁寧にフォローしてくれる仲介会社を選ぶ方法もありますね。

長町先生「信頼できる仲介会社選びは、前述した埋設物のトラブルを防ぐためにも非常に重要です。きちんとした対応をする会社なら、その土地にこれまで何が建ってきたかという地歴は可能な限り調べるはず。例えば以前がクリーニング店だった場合、取次業務だけだったか実際に作業もしていたかで、土中に化学物質が含まれる可能性は異なります。これは周囲に住んでいる方に聞き取りなども行わないと分からない部分で、そこまで徹底して調べてくれる会社なら、買主、売主ともに安心できるでしょう」

(作成日 2018年12月13日)