不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報隣家の軒や隣家の塀で建築計画の大幅変更が必要に?「境界確定」のシビアな事情

専門家がレクチャー

隣家の軒や隣家の塀で建築計画の大幅変更が必要に?「境界確定」のシビアな事情

自家と隣家の土地の境目となる「境界」には、公法上の「筆界」や私法上の「所有権界」など複数の意味があります。本来は筆界も所有権界も一致しているべきですが、何らかの理由で両者に食い違いがあった場合、誤った境界をもとに作った建築計画であれば修正を余儀なくされます。さらに近年は境界を越えて隣家から自家に伸びている軒や境界を越えている隣家の塀などによって、建築計画の大幅変更が必要になる可能性もあるとか。今回はそうした境界確定の最新事情について土地家屋調査士の奥野先生に伺いました。

専門家がレクチャー

隣家の軒や隣家の塀で建築計画の大幅変更が必要に?「境界確定」のシビアな事情

自家と隣家の土地の境目となる「境界」には、公法上の「筆界」や私法上の「所有権界」など複数の意味があります。本来は筆界も所有権界も一致しているべきですが、何らかの理由で両者に食い違いがあった場合、誤った境界をもとに作った建築計画であれば修正を余儀なくされます。さらに近年は境界を越えて隣家から自家に伸びている軒や境界を越えている隣家の塀などによって、建築計画の大幅変更が必要になる可能性もあるとか。今回はそうした境界確定の最新事情について土地家屋調査士の奥野先生に伺いました。

奥野 尚彦 先生

土地家屋調査士法人東西合同事務所

土地家屋調査士奥野 尚彦 先生

土地家屋調査士法人東西合同事務所 社員。1977年建設コンサルタント会社に入社後、主に測量・土木設計業務に従事。在職中に資格取得。大阪にて1985年行政書士登録、1986年土地家屋調査士登録。2003年土地家屋調査士法人を設立し東京オフィス開設。

LECTURE1

本来は一致すべき筆界と
所有権界が食い違うとトラブルに

今回は境界を巡る問題について、最近の傾向などを伺えればと思います。そもそも公法上の境界である「筆界」と、私法上の境界である「所有権界」等が異なるケースがあるのはなぜでしょうか?

奥野先生「筆界は、登記簿に記載されている土地の番号(地番)と番号(地番)とが接する線のことです。自家と隣家とがお互いに『ここまではうちの土地』と所有に合意している線は、所有権界といいます。当然、境界ができた当初は、両者は一致していたはずですが、長年の利用により所有権界の境界が移動していることもあります。例えば、元の筆界がいびつで土地が使いづらかったため、自家と隣家で話し合い、斜めだった部分の境界を直線に直したといった話はよく聞きます。これは、所有権界が両者の合意によって移動できる私法上の境界だからです」

所有権界を移動させたからといって、筆界も一緒に移動する訳ではないのですね。

奥野先生「はい。筆界は法務局で登記手続を行わないと変更できません。所有権界の移動と同時に筆界も変更手続される方も多いのですが、隣家との合意で実用上は差し支えないと思われたのか、実際の理由は定かではありませんが、筆界が変更されていない場合があるのです。特に東京などでは、明治時代の地租改正事業で最初に筆界が決められた後、関東大震災からの復興事業、第二次世界大戦の戦災からの復興事業という2つの大規模な区画整理事業が行われています。これらは東京都心ではかなり精度が高く、地図に準ずるとされる公図のベースにもなっていますが、復興事業そのものは非常に短期間で行われたため、まだ建物が建っている土地を分断する形で新たな筆界を定めたようなこともあったと聞きます。そうなると所有している方は使いづらいですから、筆界とは異なる所有権界を設定することもあったのではないでしょうか。そのままで時間が経ち、土地の売買などのためにあらためて境界確認をしていくと、登記にある筆界と自分たちが考えていた境界が違っていることが判明するわけです」

やはり、所有権界を変更したときは登記も変更すべきということでしょうか?

奥野先生「お互いの合意があれば通常の利用では問題は起きにくいと思われますが、土地の売買では売主は境界を示すことが求められますから、きちんと登記を変更しておけば、余計なトラブルを避けることができるでしょう。中には、筆界とは異なる位置に引かれた所有権界を正しい境界と思い込んで契約を進め、建物の建築確認もそれをもとに行ったというケースもありました。本来は、登記にある筆界から積み上げていかなくてはいけませんから、この場合は正しい筆界と所有権界とのずれがあると分かった段階で、筆界をベースにした土地の面積・形状で新たに建築確認を取り直すことになりました」

そうしたことが分かった場合、私たちはどうしたらいいのでしょうか?

奥野先生「必要なら弁護士に依頼して問題解決を図る方法もありますが、いずれにしても土地や建物の現状を把握するための調査、測量は必要になります。その際、中立的な立場で調査、測量を行うのが土地家屋調査士の役割です。土地家屋調査士は法律で制定されてから70年近い実績を持つ国家資格で、登記のための測量を行うことを許された職業です。光を利用した高度な測量機器を使うことで、精度の高い測量を安定して行うことが可能になっています」

LECTURE2

隣家からの越境物も考慮して
建築計画を立てるのが常識

ところで最近は越境物の扱いが厳しくなったと聞いたのですが、これはどのような場合のことで、どんな影響があるのでしょうか?

奥野先生「越境物には塀、樹木の枝、建物の軒といった空中部分と、建物の基礎部分や木の根などの地中部分があり、これらが建物を建てるときの建築確認に影響します。以前なら境界は境界、越境物は越境物として別に扱われるのが一般的でしたが、近年の建築基準

法では、隣家からの越境物も場合によっては自家の土地に影響すると見なされ、その分だけ自家の敷地面積を控除して計算する必要も出てきます。これは戸建てでも投資用物件でも同様です。建物の建ぺい率は敷地面積に対する割合ですから、もし、建ぺい率ギリギリの建物を建てようとしていたら、敷地面積が減ったことで制限を超えてしまう可能性もありますね。売買のために境界を確定したら越境が分かった、というようなこともありますから、その場合は越境している構造物の面積をあらためて測定し、それを敷地面積から外して考えなければいけません」

ところで最近は越境物の扱いが厳しくなったと聞いたのですが、これはどのような場合のことで、どんな影響があるのでしょうか?

奥野先生「越境物には塀、樹木の枝、建物の軒といった空中部分と、建物の基礎部分や木の根などの地中部分があり、これらが建物を建てるときの建築確認に影響します。以前なら境界は境界、越境物は越境物として別に扱われるのが一般的でしたが、近年の建築基準法では、隣家からの越境物も場合によっては自家の土地に影響すると見なされ、その分だけ自家の敷地面積を控除して計算する必要も出てきます。これは戸建てでも投資用物件でも同様です。建物の建ぺい率は敷地面積に対する割合ですから、もし、建ぺい率ギリギリの建物を建てようとしていたら、敷地面積が減ったことで制限を超えてしまう可能性もありますね。売買のために境界を確定したら越境が分かった、というようなこともありますから、その場合は越境している構造物の面積をあらためて測定し、それを敷地面積から外して考えなければいけません」

境界確定で分かることもあるのですか! しかし、地中の越境物については工事などが始まらないと分からないかもしれませんね……。

奥野先生「もちろん、実際の敷地としては存在するわけですから、隣家と相談の上で『将来撤去の覚書』をもらえれば、越境部分のある土地を含めて登記しても構いませんが、一方で、建築確認ではその面積を控除して考えるという点は同じです。さらにそうした覚書もないときは、分筆して新たに筆界を作り、越境物の面積を省いて登記することになります。もちろんこれは売買契約の金額にも影響するでしょうし、越境物がある部分の土地は売主がそのまま保有するか、無料で買主に譲渡するといったことも考えられます」

奥野先生「仲介会社に依頼しているのであれば、このようなケースにも十分に留意して契約を進めているとは思いますが、もし後から越境物が分かったような場合は、取引している仲介会社に相談にいくといいでしょう。その意味では信頼できる、そうした取引の経験が豊富な仲介会社を利用されることをお勧めします。せっかく着手した工事が止まるのは避けたいでしょうから、トラブルの対処はできるだけ早く動かれた方がいいと思います」

LECTURE3

土地の売買や建築計画には
境界と越境物の両方を確認

このようなトラブルを少しでも避けるにはどうしたらいいでしょうか?

奥野先生「一般の方は土地を売買する際、境界や越境物についてあまり調べていないことが多いようです。例えば『このブロック塀が土地の境界です』という説明では、実際の境界は塀の内側なのか外側なのか、あるいはちょうどセンターなのかまでは分かりません。もしそれで納得してしまえば、自分が思っていた境界と実際の境界が違っている可能性も出てきます。しかもその塀が木の根で押されてゆがんでいたり、年月が経って一部が崩れていたりすれば、ますます境界は曖昧になります。筆界と所有権界が一致しているかという点も含め、境界についてはもっと正確に確認される方がいいでしょう」

越境物の有無もしっかり見ておく必要がありますね。

奥野先生「そうですね。前述の通り、以前の建築確認では越境物は重視されていませんでしたから、同じ土地で建て替えようとする場合でも『今回は越境物の影響で敷地面積が変わります』ということも起こり得るのです。法務局で確認のための書類は揃いますから、買う前に現地を確認に行かれるなら、隣家の軒や隣家の塀がはみ出していないかなどを意識して見てください」

そのように自分で見落としなく確認できればよいのですが、やはりプロの目できちんと確認してもらう方が安心できますね。

奥野先生「その通りです。境界を確認して権利者の合意のもとで確定するには土地家屋調査士の力が欠かせません。そうした境界確定の経験も豊富な仲介会社に売買を依頼することは重要だと思います」

(作成日 2018年9月21日)