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土地の詐欺師「地面師」が暗躍…。騙しの手口が高度化する時代に私たちにできる防衛手段とは?

近年、不動産取引において「○○社から○億円を騙した地面師」といったニュースを耳にすることがあったと思います。地面師とは、主に所有者になりすまして不動産取引や土地を担保にした借入などを行う詐欺師のこと。司法書士の徳田友夫先生によれば「今はそうした地面師が暗躍しやすい社会状況」であり、他人事ではなく誰にでも起こり得る身近なトラブルなのだそうです。事件が我が身に降りかかるのを防ぐために、私たちが注意すべき点などを徳田先生に伺いました。

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司法書士が教える 土地の詐欺師「地面師」が暗躍…。騙しの手口が高度化する時代に私たちにできる防衛手段とは?

近年、不動産取引において「○○社から○億円を騙した地面師」といったニュースを耳にすることがあったと思います。地面師とは、主に所有者になりすまして不動産取引や土地を担保にした借入などを行う詐欺師のこと。司法書士の徳田友夫先生によれば「今はそうした地面師が暗躍しやすい社会状況」であり、他人事ではなく誰にでも起こり得る身近なトラブルなのだそうです。事件が我が身に降りかかるのを防ぐために、私たちが注意すべき点などを徳田先生に伺いました。

徳田 友夫 先生

司法書士法人 東西合同事務所

東京オフィス所長
司法書士徳田 友夫 先生

司法書士法人東西合同事務所 東京オフィス所長。 不動産、不動産の証券化における信託・受益者変更登記、商業登記等多岐に亘る登記業務に精通。

LECTURE1

土地の購入意欲の高まり、デジタル技術の進歩が地面師に有利に

少し前に、大手企業が地面師によって十数億円あるいは数十億円も騙し取られたという事件が続けて報道されました。こうした事件は増えているのでしょうか?

徳田先生「実際に増えているかどうかの確かな統計はありませんが、地面師が暗躍するのに有利な社会状況になっていることは確かです。ひとつは、2020年の東京五輪を前に、不動産取引に関心を示す個人や企業が増えていること。もうひとつは、デジタル技術の急速な進歩で、免許証をはじめ身分証明によく使われる書類の偽造精度が非常に高くなっていることです」

そんなに偽造が見抜きにくくなっているのですか?

徳田先生「一部は本物の書類を使っていたりしますが、中には非合法な手段で正式な書類を手に入れたりするケースもあります。例えば、地面師らが所有者の転居手続を勝手に行い、転居先の住民票をもとに印鑑証明書と実印を作る、などです。これに加えて運転免許証やパスポート、個人番号カードといった本人確認書類の偽造も、デジタル加工によって完成度の高いものを仕上げられるようになってきています。実印を3Dプリンタで作ってしまうケースもあるようですね。十数億円の被害となった事件では、住民基本台帳カードや不動産権利書、印鑑証明書など、契約に必要な書類もすべて偽造だったとされています」

もはや何を信じたらよいのか……という状況ですね。

徳田先生「その通りです。そしてこうしたトラブルは決して他人事ではなく、誰にでも起き得るのだという点は、皆さんにしっかり認識していただきたいと思います」

LECTURE2

更地や空き家、抵当権なし……地面師が狙う不動産の条件

では、どのような不動産が地面師に狙われやすいのでしょうか?

徳田先生「地面師が不動産の所有者を騙るなら、その嘘がばれにくい不動産を利用するでしょうね。例えば、久しく更地や空き家になっている不動産であれば、現地を訪ねても本当の所有者をすぐには確認できませんし、近隣の住民に聞き込みをしても知らないと答える人ばかりのはずです。また、所有者がずっと同じ不動産は一見安心のようですが、登記上の所有者が高齢だったり亡くなっていたりすると、その隙を地面師に狙われることもあります。数十億円の被害といわれる大手企業の場合も、数年前まで営業していた都心の老舗旅館の土地がターゲットとなり、その所有者自身は体調を崩して旅館の営業をやめていたという話も聞きます。もう一つの事件では、過去に担保設定されたことのない綺麗な不動産だったそうです。もっとも、こうした条件に当てはまる土地は“利用されるかもしれない”というだけで、すべてが地面師絡みで危ない、という意味ではありません」

ただ、現在は土地の購入意欲が高まっているときですから、少しでも有利な条件の話を聞くとすぐに飛びついてしまいそうです。

徳田先生「確かに、そうしたうまい話を作って買主にアプローチするのも地面師の手口のひとつです。例えば、非常に優良な物件や割安な価格を提示し、あるいは『別の買い手もいて、そちらは是非買いたいと言っている』といった煽り文句とともに取引を持ちかけ、正常な判断を鈍らせてしまうのです。さらには『所有者は事情があって至急売りたいそうだ』などと結論を急がせ、調査に時間がかけられないようにする作戦もあります。好条件の話を突然持ちかけられた、所有者が多忙などでなかなか会わせてもらえない、土地の権利書がない、など、普段とは違う条件で取引を進めざるを得ない状況になったら、一度落ち着いてその取引を冷静に見直すことも必要だと思います」

少し疑問に思ったのですが、権利書がなくても取引は進められるのですか?

徳田先生「2005年の不動産登記法の大改正で生まれた『本人確認情報提供制度』を悪用していると考えられます。この制度は資格者代理人、つまり弁護士や司法書士が所有者の本人確認情報を作成して法務局に提出することで、権利書がなくても、あるときと同様の手続で登記できるというものです。本人が権利書を紛失していても所有権移転などの登記がスムーズにできるようになった反面、地面師が本人になりすますために利用するケースも増えているのです」

LECTURE3

専門家の力を借りると同時に、買主自身も積極的に関与を

ところで、ここまで伺ったような地面師による詐欺は、取引前に不動産登記をちゃんと確認すれば防げるのでしょうか?

徳田先生「残念ながら、そうとも限りません。偽造した書類や実印などを使って手続をすれば、登記を本来の所有者から地面師に変更することも不可能ではないからです。さらに、日本の登記制度は『対抗力』はあっても『公信力』はないとされています。対抗力というのは、自分が登記している土地に第三者が権利を主張してきたら、それに対抗して自らの所有権や抵当権を主張できるというものです。しかし公信力がないため、地面師が不正な手段で登記したものとわかれば、偽の登記を信じて土地を購入し、自分名義の登記に書き換えた後でも、それは無効とされてしまいます。騙されて購入した人は、不動産の真の所有者になれない上、法による救済制度も公的にはありません」

それは、登記だけを信じて購入契約を結ぶのは危ない、ということですか?

徳田先生「登記を見るだけで安心してしまうと、地面師につけ込まれるウィークポイントになりやすいとは言えるでしょう。確かに、買いたいという気持ちが先立つと、その不動産の取引全体が見えなくなり、安全な取引かどうかの判断が鈍るため、売主の身辺調査が疎かになってしまうようです。ただ最近は地面師による事件が続いたことで、買おうとする方も少し慎重にはなっていると感じますね。例え、信頼できる相手だと感じても本人確認は必ず行い、そして、少しでも疑問を持ったならば、弁護士や司法書士等の専門家に依頼して、徹底的に本人確認を行うことが必要となります」

買主の自衛手段としては、ほかにどんなことが考えられますか?

徳田先生「専門家に任せる部分は任せつつ、買う側もその取引について詳しく知ろうとする姿勢を持つことが大切だと私は思っています。不動産取引の種類によって違いますが、仲介会社、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士など多くの専門家が関わることが一般的です。こうした専門家チームの中心にいるのが買主で、この取引が今どのように進んでいるのかを把握しつつ、今後どうしたいのという意思を明確に示すことが、各専門家の連携を強め、チームを円滑に動かしていくコツといえます」

地面師が偽造した書類を見抜くことはできるのでしょうか?

徳田先生「例えば、証明書の偽造を疑うなら、まずは住所・生年月日・氏名などの基本情報に違いがないか、書類に透かしが入っているか、書類のコピーをとったらコピーした側に「複写」の文字が浮き出るか、紙質・色・全体の雰囲気に違和感がないか、などは最低限チェックすべきです。コンビニで印鑑証明書や住民票を交付した場合には透かしは入りませんが、コンビニ交付独自の偽造防止技術が使われていますから、それを参考にしてください。このほか、権利証書、本人確認書類などが偽造かどうかを確認するポイントもありますから、取引の際には担当の弁護士や司法書士と相談して、どこに注意すればいいのかをまとめておくといいでしょう」

いろいろと覚えることが多くて大変そうですね。

徳田先生「ただ、いくらデジタル技術の進歩で偽造が巧妙になっても、取引全体をあらためて見直してみると、どこか違和感があったり、理由はわからなくても変だと感じたりする部分があるものです。そうした違和感をキャッチするには、念のため事前に現地を自分で確認しておくなどの情報収集は欠かせません。そして買主でも、専門家の誰であっても、引っかかった点は全員で共有し、その不安材料をひとつずつ確認していくことが最善の方法と考えています」

(作成日 2018年9月6日)