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専門家がレクチャー

弁護士が教える 民法が120年ぶりの大改正!不動産取引は2020年に激しい変化が起きる?

日々の暮らしに密接に関わり、さまざまな法律の礎となっている「民法」の改正が決まりました。大谷先生によれば、今回は法定利率の引き下げをはじめ改正される項目は非常に多く、考え方など根本的な部分にも変更が加わるため、影響は多岐にわたるとのことです。大がかりな民法の改正を前に、私たちはどのように準備すべきなのでしょうか?

弁護士が教える 民法が120年ぶりの大改正!不動産取引は2020年に激しい変化が起きる?

日々の暮らしに密接に関わり、さまざまな法律の礎となっている「民法」の改正が決まりました。大谷先生によれば、今回は法定利率の引き下げをはじめ改正される項目は非常に多く、考え方など根本的な部分にも変更が加わるため、影響は多岐にわたるとのことです。大がかりな民法の改正を前に、私たちはどのように準備すべきなのでしょうか?

大谷 郁夫 先生

銀座第一法律事務所

弁護士大谷 郁夫 先生

平成3年弁護士登録 賃貸経営をめぐるトラブルで悩む大家さんからの相談多数。建物明け渡し訴訟・滞納家賃回収相談サイト『銀座第一法律事務所 ハロー大家さん』を運営。著書に『ちょっと待った!!大家さん! その敷金そんなに返す必要はありません!!』(すばる舎)等。

LECTURE1

低金利時代を反映し、5%だった法定利率が3%に変更

2017年の半ば頃ですが、新聞や雑誌などで「民法大改正」といった記事をよく見かけました。民法はいつから、どのように変わるのでしょうか?

大谷先生「2017年の5月末に参議院本会議で可決されましたから、その頃によくニュース等で取り上げられたのだと思いますが、施行は2020年前半が予定されています。民法改正はこれまでも何度か行われていますが、変更が影響する分野は比較的限られていました。しかし今回は、改正される項目の多さに加え、考え方や仕組みまで一部変更されるなど、民法制定以来の大改正といえます。このため影響は多方面に及んできます」

具体的にはどういった点が変わることになるのですか?

大谷先生「とても一言では言い表せないのですが、よく例として挙げられるのは法定利率の変更です。これは5%から3%へと引下げられ、さらに3年ごとに市場金利の動向をもとに見直しを行うことになりました。これまでずっと5%だったものが、現在のように超低金利が続く世の中と整合性を持たせるために見直されたものです。契約通りにお金を支払わなかった場合に発生する遅延損害金も改正後には3%となり、不法行為による損害賠償などにおける遅延損害金や、将来の逸失利益を算定する際の生命身体損害等の中間利息控除など、この変更だけでもさまざまな面に影響が出てくるはずです」

ちなみに、なぜ民法が改正されることになったのでしょうか?

大谷先生「もともと現行の民法は明治時代に制定されたものです。ですから現状にそぐわない部分を一部改正したり、裁判の判例や実務の取り扱いで対応したりと、つぎはぎの状態が長く続いていました。このため『民法にはAとあるが、常識や判例等によればBという判断が適切』といった食い違いが山積しており、それらを現状に合った条文にすることが今回の大きな目的となっています。このほか、従来にはなかった考え方や仕組みを採り入れた点もありますが、その中には『対等な立場にある個人間の関係を定める』という民法の原則をやや離れ、経済格差や弱い立場にある人に配慮した変更も含まれています」

LECTURE2

売買時の瑕疵担保責任は、契約内容との不適合責任を問うものへ

それでは不動産取引で、何か特徴的な変更はあるでしょうか?

大谷先生「不動産売買においては、瑕疵担保責任に対する考え方が変わりました。改正後の民法では『瑕疵』の言葉自体が使われなくなり、『種類、品質又は数量に関して、契約の内容に適合しない』という表記に変わります。もともと『瑕疵』も、契約書に特別な定めがなければ、常識で考えて備わっているはずの性能や性質が欠けている(例えば契約書に特別な定めがなければ家は雨漏りしないのが当然、雨漏りするなら瑕疵)といった意味ですから、言葉だけを見れば難しいものが一般的なものに置き換えられたといえます。ただ、今回の改正によって、売主は契約時に決めた内容に適合する形で渡す義務が明確になりました」

契約した内容に適合しない場合に責任を問われる、ということでしょうか。

大谷先生「そうです。現行民法の瑕疵担保責任は『隠れた瑕疵』、つまり買主が契約時に分からなかった瑕疵が対象でしたが、改正後には隠れた(分からなかった)・隠れていない(分かっていた)に関わらず、契約した内容に適合しているかどうかが判断基準となってきます。さらに、売主に責任を問う際の買主側の対応も明確になりました。まず『追完請求権』によって、契約内容と適合するよう交換したり、修理したりを売主に求めることができます。そうした請求への対応がなされない場合、『代金減額請求権』によって代金の減額請求ができますが、これらの追完請求権と代金減額請求権は改正後の民法で新たに認められたものです。次の段階では『損害賠償請求権』によって損害賠償ができ、『契約の解除』も可能です。もちろん、追完請求や代金減額請求は『買主の責めに帰すべき場合、不可』など、買主がそれぞれの権利を行使できる条件についても定められています」

売主側は、今回の改正をどのように考えればよいのですか?

大谷先生「基本的には改正をふまえ、問題のある箇所などは契約時にしっかりと買主側に伝え、それを契約内容として明記するよう怠らないことです。ただ、今回の改正は多岐にわたっているため、売買を直接の対象にしていない部分の改正であっても、法定利率の変更による遅延損害金の変更、あるいは債権の時効期間の変更などのように、取引には多方面から影響してきます。やはり、施行予定の2020年までに、そうした問題に詳しい専門家や不動産会社に相談しておく方がいいでしょう」

時効期間は10年だったかと思うのですが、それにも変更があるのですか?

大谷先生「現行民法でお金を払ってもらう権利(=債権)の時効は、権利が行使可能なときから10年間で、それが商事売買によるものなら5年間、そのほか職業別に時効期間が決められていました。改正後には権利が行使可能なときから10年間、権利を行使できると知ったときから5年間の2本立てに整理され、商事売買や職業による時効期間などの決まりはなくなります」

ある人に対する債権があると知って、5年間何もしなかったら時効なのですか!

大谷先生「そうなります。もっとも、契約に基づく商事売買なら、契約締結時に、いつ権利行使可能か知るわけですから、時効期間は実質5年間となり、現状と差はありません。一方で、親の金を親族が勝手に使っていて親の死後にそれが分かった場合などは、その出来事が起きて10年間、またはその事実を知ってから5年間のいずれかが時効期間となります」

大谷先生「このほか、時効期間については、当事者同士が協議を行うことを書面で合意した場合には、その協議中は時効期間に換算されず、結果として時効期間が延びるという規定が新たに設けられました」

LECTURE3

根保証に新たな規定。極度額を決めないと契約自体が無効に

冒頭に出た「立場の弱い者への配慮」の点で、代表的な変更例はあるでしょうか?

大谷先生「根保証に関して、極度額の規制がお金の貸し借りだけでなくすべての取引に拡大されたことが挙げられます。例えば、AからBがお金を借りるとき、Cに保証人を頼むとします。この場合は『1,000万円を借りる分の保証人になってほしい』と保証の範囲を限定することが一般的だと思いますが、根保証は『AからBが継続的にお金を借りる場合に、BがAから借りたお金のすべての保証人になる』というものです。これは保証人が非常に広範な責任を負う不利な条件との考えから、お金の貸し借りに関する根保証は平成16(2004)年の民法改正時に規制されました。具体的には、根保証であっても契約時に保証の範囲(極度額)を決め、保証人に書面で明示した上で契約を行うことが必要となり、極度額を決めない根保証の契約は無効となっています。今回の改正では、この規制の対象がすべての取引に拡大されます」

不動産取引では、どのような場面で根保証が使われていますか?

大谷先生「身近なのは、賃貸契約をする際の保証人は根保証でしょうね。物件を借りた人が大家さんに対して負う責任、例えば滞納した家賃や強制執行にかかった費用なども含め、すべての責任を保証人が負うのですから。今回の改正によって、施行後に新たに賃貸契約を結ぶ場合、保証人に対する極度額を契約書に盛り込んでおく必要があるのです。このとき、あまり大きすぎる金額では保証人になる人が尻込みするかも知れないと心配して、少ない金額を極度額にすると根保証の役割を果たさない可能性も考えられます」

そうなると極度額の金額設定が難しくなりそうですね。

大谷先生「といっても、そうした契約書の作成はきちんとした不動産会社ならきちんと対応してくれるでしょうし、保証会社を使う方法もありますから、貸す側があまり心配することはないと思います。ちなみに、保証人に関した改正では、債権者が保証人に情報提供する義務も新たに設けられました。保証人から債権者に対して債務者の返済状況等の問い合わせがあった場合、順調に返済しているか、滞っているかなどの情報を適切に提供する義務があるというものです」

2020年に予定される民法改正による影響を、いろいろなケースで教えていただきましたが、私たちがそれまでに準備しておくことは何かあるのでしょうか?

大谷先生「繰り返しになりますが、今回は民法の大改正と呼ぶにふさわしい大きな変更がいくつも行われますから、心配な点があれば専門家や不動産会社に早めに相談することが大事だと思います。その意味では一般の方より専門家の方が大変かも知れませんね、これまで覚えて使ってきた知識を破棄して、新たに勉強し直すことが一気に増えたのですから。そうした状況に対応していける熱心な専門家、きちんとした不動産会社を見極めて付き合っていくことが重要になるでしょう」

(作成日 2017年12月19日)