不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報税理士が教える 譲渡益から最高3,000万円を控除「空き家の譲渡所得の特別控除」を使えるのはこんな人!

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平成28年4月1日から施行された税制改正。その最大のトピックは、譲渡
益が最大3,000万円まで控除される「空き家に係る譲渡所得の特別控
除」です。
今回は経験豊富な税理士の先生に、その目的や条件、注意すべき点な
どについて伺いました。

税理士が教える 譲渡益から最高3,000万円を控除「空き家の譲渡所得の特別控除」を使えるのはこんな人!

平成28年4月1日から施行された税制改正。その最大のトピックは、譲渡益が最大3,000万円まで控除される「空き家に係る譲渡所得の特別控除」です。
今回は経験豊富な税理士の先生に、その目的や条件、注意すべき点などについて伺いました。

LECTURE1

空き家を売ったときの値上がり益を
3,000万円まで控除する目的とは?

本年の改正で、被相続人の自宅(建物及び敷地)を譲渡すると(一定の条件を満たす場合ですが)、最高3,000万円まで特別控除が適用できるようになったそうですね。

田中先生「はい。現行の租税特別措置法では、ご自分が住んでいる家を売った場合に一定の要件を満たすと最大3,000万円まで特別控除を受けることができる規定があります(居住用資産の譲渡特例)。ところが、親が亡くなって空き家になった建物や敷地を売った場合、特別控除を適用することはできませんでした」

土地建物を所有している年数が、譲渡する年の1月1日現在で5年を超えている場合(被相続人の所有期間を含む)、値上がり益に対し通常20.315%の税金が課税されるのですね。

田中先生「そうです。親が亡くなる前に譲渡したり、親が亡くなった後でも、同居していた人がその家を相続した後に譲渡すると、原則として、居住用資産の譲渡所得として3,000万円の特別控除が受けられます。この場合は、値上がり益に対し3,000万円まで税金がかからないので譲渡した方の負担が少なく済みますが、一人暮らしの親が亡くなった後、相続人が空き家になった不動産を売っても特別控除は受けられなかったのです」

ひょっとしたら値上がりするかもしれないと考えて売り惜しみをしたり、実家だから自分が育った家を売りにくいという心理的な抵抗感があって、なかなか売ることに踏み切れない場合もありますね。

田中先生「そうなのです。ただ、空き家のまま放置すると、人が住まない場合は特に痛みが激しく、古い家屋ですと数年後には廃屋同然になる可能性もあります。相続した人が近くにいなければ管理も行き届きません。このような空き家の発生は好ましくないので、相続した人になるべく早く売ってほしい。そのような観点から、新たに創設された『空き家特例』は、「一定の要件を満たす空き家」を「相続してから3年目の年末までに譲渡する」と3,000万円の特別控除が受けられる特例です。利用には諸条件があります(次表参照)」

税理士法人日本税務総研 税理士 田中耕司先生

税理士 田中耕司先生
大阪国税局、住友信託銀行勤務を経て、現・日本税務総研代表

田中先生「この規定は、空き家の発生を抑制するための規定なので、亡くなった後に誰かが住んだり、事業などに使ったり、貸したりすると適用できなくなりますから気をつけてください」

同居人が残っていて住み続けている場合はどうなるのでしょうか?

田中先生「その場合は、先に述べましたように、同居人が相続または遺贈により家屋と共に敷地を取得した後に譲渡すると、原則として、値上がり益に対し最高3,000万円までの特別控除があります(措置法35条)」

被相続人の自宅については、相続税の特例もあります。「どんな人が自宅を相続または遺贈により取得する方が得なのか」という相続税の節税と、取得した人が相続後に「譲渡する場合はどのような条件を満たした上で譲渡するのが得なのか」という所得税の節税と、関連して考える必要がありそうですね。

田中先生「鋭いご指摘です。自宅の敷地について、特定の人が相続または遺贈により取得すると最高330㎡まで評価額の80%を減額した金額を課税価格とする『自宅の小規模宅地等の課税価格の特例』を受けることができます」

相続税評価額が5,000万円の自宅の敷地が、小規模宅地等の課税価格の特例を受けると課税価格は1,000万円でいいという、非常に有利な特例ですね。

田中先生「この特例は、配偶者や同居の法定相続人がいるとそれ以外の人が相続しても適用できません。配偶者が先立ち、一人住まいの方が亡くなった場合、自宅の小規模宅地等の課税価格の特例を受けられるのは、いわゆる家なき子(自己もしくは自己の配偶者の所有家屋に住んでいない人)です」

相続で取得する人により、その後の譲渡所得の注意点が異なるのでしょうか。

田中先生「そうです。配偶者や同居の親族が相続した場合は、敷地だけでなく家屋も相続しておかないと3,000万円の居住用資産の特例が受けられません。いわゆる家なき子が空き家になった自宅を譲渡する場合に「空き家特例」を使う場合は、譲渡するまで貸し付けたり、住んだり、事業に使ったりしないように気をつける必要があります」

複雑ですね。遺産の分割方法などにも影響する気がします。一般の人には判断が難しいのでは?

田中先生「そうです。まず、遺産分割時点で、空き家になったご実家を利用するのか、譲渡するのかを決めていただく必要があります。どなたかが住み続ける場合はもちろん、将来、譲渡する予定で相続する場合も、小規模宅地等の課税価格の計算特例を使える人に相続してもらう必要があります。遺産の大部分を自宅の価値が占めるのなら、相続税と譲渡所得の特例を両方使える人が相続した後に換価(譲渡)し、譲渡代金から他の相続人に相続分を支払う(代償分割)という協議方法を検討します」

やはり、複雑そうです…。

田中先生「そのために、相談相手となる税理士がいるのです。ただ、税理士にも分野によって得意・不得意があります。医師や弁護士の専門が分かれているのと同じです。企業税務の専門税理士などは、一生相続税の申告書を手にすることがない人までいるのです。相続財産を守るために、できれば資産税の豊富な知識と経験を有する税理士を見つけていただきたいと思います。相続税実務の経験年数、開業までの経歴などを確認したり、信頼できる人や会社からの紹介を使ったり上手に見つけていただければと思います」

単に税理士というだけでなく、いろいろ質問してみて、すぐに目の前できちんと解説してくれる税理士がいいし、逆に、ちょっと質問すると、「調べておきます」という回答が多い人は避けた方がいいということですね。

では次に「空き家を相続した場合」「将来は空き家になりそうな自宅に住んでいる場合」の2つに分けて、今やるべき事、やらない方がいいことを見てみましょう。

せっかくだから誰かに住んでもらうか、もしくはそのまま売却するか?悩みどころです(イメージ)

LECTURE2

すでに空き家を相続している場合、
現状を維持しておき、しっかり検討する

旧耐震基準の建物や、被相続人が亡くなった後は誰も住んでいないなど、特別控除の条件に当てはまりそうな空き家を相続している場合はどうしたらいいでしょうか。

田中先生「相続した空き家をどうしたいかをじっくり考えてから行動することです。さきほどお話した通り、この特別控除は、一時的にでも誰かが住んだりすると適用されません。耐震補修をして売るのはいいのですが、建て替えをすると適用できなくなります。『どうせ空いているなら、上京する子どもにしばらく住まわせよう』というのもだめです。売るのか、誰かが住むのか、賃貸物件にするのかなどきちんと計画を立てることが必要です」
「建物を取り壊す場合は、譲渡する側が取り壊さないと適用できなくなるという条件も忘れてはなりません。譲渡価額について『1億円を超えない』という条件もあります」

売却するとき、敷地の半分には自分たちが住んで残りを売却する、といった場合はどうなりますか?

田中先生「土地と建物で全体が1億1,000万円の空き家を相続したとします。半分を5,500万円で売り、残り半分に自宅を建てるのならば、譲渡対価が1億円を超えないので(他の要件を充足すると)空き家の特別控除を適用できます」

今年は半分の5,500万円、来年はさらに残り半分の5,500万円…というように分けて売ったときはどうでしょうか。

田中先生「複数年に分けて譲渡した場合、合計して1億円を超えると、最初の年の譲渡も含めて適用できなくなります。また、兄弟で分けて相続して、それぞれが売却した場合も、合計額が1億円を超えると全体が適用できなくなります」

LECTURE3

将来は空き家になる家なら
「空き家にしない」こともひとつの方法

では、「今は独り住まいで、自分に万が一のことがあれば空き家になる」という家を所有している場合、何か今のうちに考えることはあるでしょうか?

田中先生「もともと旧耐震基準の建物が対象ですから、この場合も『今のうちにバリアフリーに建て替えよう』といった計画は要注意です。今回の空き家の特別控除は使えなくなります」

そうですか…。建て替えると空き家特例が使えないから、使いにくい古屋で我慢しよう、というのは本末転倒な気がします。

田中先生「そうですね。住み心地の良い家に建て替えて余生を過ごすのは重要なことです。建て替えても節税になる方法は、できることならば、自宅を譲りたい人と同居を始めることです。同居した人が相続または遺贈により財産を取得して、何かの都合で相続後に譲渡する時には、『居住用資産の特別控除』が適用されるからです」

親が子ども家族の家に転居して同居するというのはどうでしょうか。息子が働いている場合など、引退した親が転居する方が現実的です。

田中先生「ええ、そのような事例も見受けられますが、実は、この形態は相続人の税負担が増大します」

というのは?

田中先生「親はそれまで居住していた自宅を空き家にして息子家族の家に引っ越します。その後、親が亡くなった場合、自宅は『小規模宅地等の課税価格の特例』も適用できず、もちろん『空き家特例』の対象にもなりません」

そうですか。ちょっと考えてしまいます。さまざまな条件を考慮しながら相続や譲渡を考えていくのは、なかなか難しいことですね。

田中先生「税理士に相談するとき、最も大事なことは『自分や家族がどう暮らしたいか』です。どこにどのような形態で住みたいかを説明していただき、最適な形を設計することが複雑な税制をうまく使いこなす秘訣かもしれません」

また、わからないことを税理士に相談するときは、時期が大切だと聞いていますが。

田中先生「ええ、相談していただくタイミングは重要です。できれば色々な契約する前に、経済的な行動を起こす前に相談していただきたいと思います。契約後にどうしようと相談に来られても、できることは限られてしまいます」
「税理士は、依頼者の『こう暮らしたい』という理想を実現するために、税制面から最も効果的で経済的な方法を考えるのが仕事です。ただ、残念なことに、相続税や譲渡所得に精通した税理士は多くはありません。経歴の確認や信頼できる人からの紹介などでベテランの税理士を見つけることが、相続と譲渡を成功させるポイントかもしれません」

専門知識を持った税理士に相談するなどして、自分たちにとってベストな方法を考えましょう(イメージ)

(作成日 2016年6月14日)