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専門家がレクチャー

生産緑地の「2022年問題」土地価格への影響は限定的?もしくは売却を検討すべき?

「生産緑地の2022年問題」をご存じでしょうか? 多くの方は、よく知らないかもしれません。ただ、この問題の影響で、都市部の土地・住宅市場の下落が懸念され、一部では「今が土地の売りどきでは?」との声も出ているようです。しかし、こうした土地問題に詳しい長町真一先生は「さほど大きな影響は出ないのでは」と語ります。今回は「生産緑地の2022年問題」に関する基礎知識から、2018年に施行された生産緑地法改正による最新動向、売却を検討した方がいいケースなどを長町先生に伺いました。

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弁護士が教える 生産緑地の「2022年問題」土地価格への影響は限定的?もしくは売却を検討すべき?

「生産緑地の2022年問題」をご存じでしょうか? 多くの方は、よく知らないかもしれません。ただ、この問題の影響で、都市部の土地・住宅市場の下落が懸念され、一部では「今が土地の売りどきでは?」との声も出ているようです。しかし、こうした土地問題に詳しい長町真一先生は「さほど大きな影響は出ないのでは」と語ります。今回は「生産緑地の2022年問題」に関する基礎知識から、2018年に施行された生産緑地法改正による最新動向、売却を検討した方がいいケースなどを長町先生に伺いました。

長町 友夫 先生

弁護士法人 御宿・長町法律事務所

代表パートナー
弁護士長町 真一 先生

平成16年弁護士登録 不動産をはじめ、金融・IT関連等多種多様な業種の顧問会社からの相談、訴訟案件を多数受任。クライアントのニーズに対し、早期解決、利益最大化を目指し、税務・会計にも配慮した解決方法を提案。経営者目線での合理的なアドバイスも行う。

LECTURE1

「生産緑地の2022年問題」は
何が始まりで、何が問題とされているのか?

「生産緑地の2022年問題」については、「2022年になったら都市部の土地や住宅の価格は大幅に下がるだろう」「だから売りどきは今のうち、買いどきはその後」といった噂も聞かれます。なぜ、こういった話が出てくるのでしょうか?

長町先生「これは、『生産緑地法』という法律が1992年に改正され、そのとき定められた内容が30年後にあたる2022年に期限を迎えることが前提となっています。もともと、生産緑地法は1974年に制定されました。当時は第二次ベビーブームで、実は私もその頃に生まれたのですが(笑)、出生数も年間約210万人と現在の倍以上だったんですね。それにより、急増する宅地化へのニーズと都市の計画的整備を両立させるため、同時期に改正された『都市計画法』では、宅地化を前提とした市街化区域と、市街化を抑制して緑地を残す市街化調整区域に分けることにしました。その市街化区域の中でも、特別に緑地を残すために制定されたのが、生産緑地法です。市街化区域内の農地については、農地所有者の同意を得て生産緑地地区の指定が行われました」

関係のある方も少なくなさそうですね。「いま自分は実家を出て働いているけど、両親は生産緑地で農業を営んでいる」といったケースもありそうです。ちなみに生産緑地法は、1992年の改正でどのように変わったのでしょうか?

長町先生「当初、生産緑地法が制定された後も都市化はどんどん進み、1980年後半からのバブル景気によって地価はさらに上昇するといった状況でした。この頃の生産緑地法の対象になっていたのは、面積要件が第1種生産緑地で1ヘクタール(1万平方メートル)、第2種で0.2ヘクタール(2,000平方メートル)と広大で、実際に生産緑地地区の指定が受けられたのは市街化区域内農地の数パーセントといわれています。なお、第1種とは10年後に生産緑地を転用して土地の売却が可能になり、第2種とは5年後に同様の措置が受けられるという条件です。1992年の改正では、この面積要件が500平方メートルに縮小された一方で、営農を続ける義務期間は30年と大幅に延びることになりました。もちろん優遇策もあり、固定資産税は農地課税が適用され、相続税等の納付も猶予されることになっています」

それで、30年後の2022年がクローズアップされるわけですね。

長町先生「はい。しかも、このときの生産緑地法では、生産緑地地区では30年間は営農を続ける義務があり、営農に無関係の建築等や宅地の造成もできません。もしそれらが30年後に一斉に売りに出たら、宅地に転用されて住宅が供給過剰になり、市場が混乱するのでは? という予測が出てきたのです」

LECTURE2

約1万3,000ヘクタールの生産緑地が
すべて宅地化される?

実際にはどの程度の影響が出そうなのでしょうか?

長町先生「私の結論としては、2022年問題の影響はさほど大きくなく、土地を売り急いだり買い控えたりする必要は感じないということです。ただ、一部の方にとっては土地の売却を検討する必要があるかもしれません。ひとまず現状を整理すると、全国に生産緑地地区として指定された農地は約1万3,000ヘクタールあり、そのうちの約8割にあたる約1万400ヘクタールが2022年に30年の期限を迎える予定です。前述の『指定告示日から30年経過したとき』です。営農をやめる場合、生産緑地地区として指定された農地は原則として地方自治体が買い取ることになっています。しかし財政に余裕のある自治体は少ないでしょうから、すべてを買い取ることはできないと考えられ、この場合は他の農業従事者への斡旋が行われることになっています。それでも買い手がなかったときは、生産緑地地区の指定が解除され、所有者は宅地への転用も可能になります」

少し時間はかかりそうですが、転用後の宅地を不動産会社が買い取るケースは比較的ありそうに思えます。それでも影響は少ないのですか?

長町先生「少ないと考える理由の一つは、半数以上の農業従事者が『相続税等納付猶予制度』を利用している点です。例えば東京都の調査では、都内農家の約58%、兵庫県の調査では県内農家の約57%が、所有する生産緑地地区に指定された農地に同制度の適用を受けていると答えています。この制度により、農業投資価格を超える部分に対応する相続税の納付が猶予されるのですが、あくまで猶予ですから、営農をやめるなら猶予税額と利子税を払うということになります」

「20年間の営農で猶予税額も免除される」とありますが、一度相続しているのですから、まだその年数に達していない方も多いでしょうね。

長町先生「そうですね。さらに、2018年に改正生産緑地法が施行されて、生産緑地に関する諸条件が緩和された『特定生産緑地指定制度』が創設されたことも大きいと思います。この改正で、特定生産緑地の面積要件は300平方メートル以上と、以前より小規模な緑地も対象となり、直売所や農家レストラン等の設置も可能になりました。また、特定生産緑地に指定されると買取申出の時期を10年延長できる上、10年後に再指定も可能なので、実質的には延長制限はないと考えていいでしょう。ただし、こうした新たな施策を活用するには、生産緑地地区の指定から30年経過する前に、新たに自治体から特定生産緑地の指定を受けることが必要です」

指定を受けないまま30年が経過するとどうなりますか?

長町先生「土地の所有者はいつでも自治体に買取申出ができますが、固定資産税の評価が宅地と同様になりますから、2022年以降も営農を続ける意志があるのなら、あまりお勧めできる選択とはいえないでしょう」

LECTURE3

営農継続を支援する新法案も成立。
それでも土地売却の検討が必要なケースとは

しかし、いましばらくは特定生産緑地として営農を続けても、子どもはすでに別の土地で就職しているなど、いずれ後継者不在に悩む方もいるかと思います。そのために宅地に転用されることもあるのではないですか?

長町先生「そのような場合にも備えて、同緑地を貸借しやすくする法律が2018年6月に可決されました。『都市農地の貸借の円滑化に関する法律案』という名称通り、これまで以上に貸借をしやすくするため、条件を緩和する内容です」

どういった点が緩和されたのでしょうか?

長町先生「現在も生産緑地地区に指定された農地の貸借は可能なのですが、農地として貸し出すと、農地法18条の関係でなかなか戻ってきにくいという前提がありました。また、前述した相続税等納付猶予制度も、自分で営農することが適用条件に含まれていたため、貸借した時点で猶予されていた税金を納付する必要があったのです。しかしこの法律案によって、特定生産緑地は農地法18条の適用を受けることなく柔軟に貸借できるようになり、加えて貸借中も相続税等の納付猶予は続くことになりました」

それなら、農業法人などが一定期間だけ貸借することもできそうですね。ここ数年の法改正で、生産緑地の扱いもずいぶん変わったのですね。

長町先生「国が都市農地に関する方針を大きく転換したことも、こうした変更が行われた要因のひとつです。1992年の生産緑地法改正は、緑地保護とはいっても基本的には30年以上の営農が義務づけられるため、『そこまで続けるのは難しい』と考えて生産緑地地区の指定を受けなかった場合、固定資産税が住宅並みの課税になったのです。こうした土地では宅地化が進んだところもあり、当時の改正は都市緑地の宅地化も睨んだものだったといえます。しかしここ数年の改正は、都市に緑地を残す方針になっているのは明らかです」

なるほど、そうした国の方針があれば、生産緑地が一斉に売られる可能性も低いでしょうし、売り急ぎや買い控えの必要性はないと感じます。ただ、一部の方は売却を検討する必要も考えられるとの話でしたが……。

長町先生「そうですね。これまでご説明した施策で、決断を10年後や20年後に先送りできるようになったとはいえ、後継者不在で借り手も見つからないような場合、いずれは営農をやめざるを得ないでしょう。そのとき、特定生産緑地の土地としての価値がどうなっているか? の判断は難しいところで、すでに三大都市圏といえども、周辺都市の中には価格下落が目立ち始めている地域もあります」

そうした状況で300平方メートル、500平方メートルといった土地が宅地に転用されると、地域へのインパクトもありそうですね。

長町先生「はい。ですから、生産緑地をお持ちの方も、一般の土地をお持ちの方も、いずれは土地の売却を考えたいのであれば、今の段階で信頼できる仲介会社に売却の見込みなどを相談されることをお勧めします」

(作成日 2018年9月27日)