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底地・借地の法律Q&A

底地・借地の法律Q&A

底地・借地の法律
Q&A

弁護士
田宮合同法律事務所

底地・借地の法律で悩んでいる方、これから定期借地権等で土地を貸そうと検討している方、借りようとしている方に知っていただきたい底地・借地に関する法律のポイントをまとめています。

※底地・借地の問題については、個別性(契約の内容等)があり総合的に判断しなければなりません。弁護士等に早めにご相談のうえ判断していただくようお願いいたします。また、本コンテンツの内容は、平成26年12月1日現在の法律に基づき作成されております。
底地・借地の法律に関する法律をQ&A形式で解説します

貸主の義務

Q
地主は、賃貸借契約を締結して、その土地を借地人に引き渡した後も、借地人に対して何か義務を負うのですか。
A

 地主は、借地人に土地を引き渡した後も、その土地を利用させる義務の他に、その土地の使用収益に必要な修繕をする義務、借地人がその土地の状態を保存・回復するために必要な費用やその土地の価値を上げるのに有益な費用を支出した場合にその費用等を償還する(借地人に支払う)義務などを負います。土地を借地人に引き渡したら地主の義務は終わり、ということにはなりません。
 修繕というと建物の修繕がイメージされますが、土地の場合でも、例えば崖崩れや地盤沈下があった場合など、借地人がその土地を利用できるようにするための修繕を施す必要が生じる場合があります。
 その土地の状態を保存・回復するために必要な費用は、必要費と呼ばれ、借地の場合、例えば地震による地盤沈下があった場合の土盛り費用など、その土地を利用できる状態にするために必要な費用が含まれます。
 土地の価値を上げるのに有益な費用は、有益費と呼ばれ、借地の場合、例えば、石垣の築造や、道路開設など、客観的に判断してその土地の価値を増加させる費用が含まれます。この有益費に含まれるかどうかは、あくまで客観的に判断されますので、借地人の個人的な趣味嗜好による改良等により生じた費用は有益費には含まれず、その費用を借地人に支払う必要はありません。
 この有益費の場合、借地人が地主に支払いを請求できるのは、借地契約が終了してからです。そして、地主は、有益費として借地人に支払う金額について、借地人が実際に支出した金額にするか、又は請求時点でその土地の価格が増価している分の金額かどちらかを自由に選択することができます。

Q
崖上の土地を貸していたところ、先日の豪雨の影響で、土留施設が一部損壊し、安全に使えなくなってしまいました。この土留施設の工事を行うことは地主の義務なのですか。
A

 地主の義務となります。
 地主には、借地として貸している土地の使用収益に必要な修繕をする義務があります(【Q地主は、賃貸借契約を締結して、その土地を借地人に引き渡した後も、借地人に対して何か義務を負うのですか。】参照)。
 地主は借地人に土地を貸した以上、それを利用させる義務があり、この義務から、その土地を利用できるよう修繕する義務も派生して生じるのです。
 豪雨により土留施設が損壊して安全に使えなくなっている場合、借地人によるその土地の利用に支障が生じておりますので、地主には、損壊した土留施設を修繕して安全に使えるようにする義務があります。
 地主の修繕義務は、修繕が必要となった場合に生じます。そして、修繕が必要となるのは、修繕しなければ借地人が契約によって定まった目的に従って使用収益できない状態になったときです。
 すなわち、たとえ借地に何らかの障害が生じたとしても、借地人の使用収益が妨げられない限り、地主の修繕義務は発生しないことになります。
 また、修繕の程度も、修繕前と全く同じ状態にまでしなくても、借地人がその土地をその用法に従って使用収益できる程度まで修繕すればよいとされています。

Q
借地人が地主に断らず、無断で借地の工事を行ったにもかかわらず、工事費を請求してきました。支払わなければならないのですか。
A

 その工事が土地の利用にとって必要か又はその価値を増加するものであれば、地主は工事費(又は増価額)を支払わなければなりません。
 地主には、民法上、費用償還義務が定められており、この「費用」には必要費と有益費があります。必要費とは、その土地の現状維持・保存のための費用のことです。有益費とは、土地を改良してその価値を増加させた費用のことです(【Q地主は、賃貸借契約を締結して、その土地を借地人に引き渡した後も、借地人に対して何か義務を負うのですか。】参照)。
 設問の場合、借地人による工事がその土地の利用にとって必要なものであれば、地主は、その工事費を支払う必要があります。また、工事が土地の利用にとって必要とまでは言えないものの、その価値を増加させるものである場合には、地主は、工事費又は増価額を支払う必要があります。
 借地人による工事が土地の利用にとって必要なものなのか、必要とまでは言えないが価値を増加する有益なものなのか、いずれに該当するかによって、地主が請求され得る金額が変わってきます。これらのうちいずれに該当するかは、その借地契約の目的も加味して個別具体的に見ていく必要があります。