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賃貸経営の法律Q&A

賃貸経営の法律Q&A

賃貸経営の法律
Q&A

弁護士
銀座第一法律事務所
大谷 郁夫

賃貸経営に関する法律について、現在、賃貸経営を営まれている方はもちろんこれから賃貸経営を始めようとお考えの方に知っていただきたいポイントをわかりやすく解説しています。

※実際のトラブル等では個別性(地域の慣習等を含む)があり総合的に判断しなければなりません。弁護士等に早めにご相談のうえ判断していただくようお願いいたします。 また、本コンテンツの内容は、平成27年1月31日現在の法律に基づき作成されております。
賃貸経営に関する法律をQ&A形式で解説しています。

定期建物賃貸借契約

Q
定期建物賃貸借契約とは何ですか。どんなメリットがありますか。
A
1.定期借家契約とは?

定期建物賃貸借契約は、契約期間が満了すると、契約の更新はなく、確定的に契約が終了する建物賃貸借契約です。
普通建物賃貸借契約の場合、【Q アパートやマンションなどの建物の賃貸借契約には、どのような種類がありますか。】で説明しましたように、契約期間が満了しても、ほとんどの場合法定更新となってしまうため、賃貸借契約が極めて長期間存続し、賃貸人にとって大きな負担となっていました。
そこで、借地借家法により、契約期間の満了により確定的に終了する定期建物賃貸借契約制度を創設しました。

2.定期建物賃貸借契約は大家さんに有利

定期建物賃貸借契約には、次のような5つの特徴があり、かなり大家さんにとっては有利な内容となっています。

  1. 契約で定めた契約期間が終わると契約は必ず終了し、契約の更新はありません。
    もっとも、大家さんと借主が、同じ部屋について改めて賃貸借契約を締結することは可能です。しかし、この契約は、前の契約の更新ではなく、あくまで全く新しい契約です。
  2. 必ず契約期間の定めのある賃貸借契約でなければなりません。ただし、契約期間の短期と長期に制限はありません。
    定期建物賃貸借契約は、契約期間が終わると契約が必ず終了するというものですから、契約期間の定めがなければ成り立ちません。
  3. 賃貸借契約書に借主からの中途解約を認める条項がない場合、借主は契約を中途解約することができません。
    【Q 借主が契約期間中に中途解約することはできますか。】で説明しましたように、普通建物賃貸借契約の場合、賃貸借契約書に借主からの中途解約を認める条項がない場合でも、中途解約の申入れから2から3か月間は契約が継続するとするか、借主が2から3か月分の家賃をペナルティとして支払うかのどちらかを条件として、借主らの中途解約を認めるのが普通です。しかし、定期建物賃貸借契約では、このような取り扱いをする必要はなく、借地借家法の定める特別な事情がある場合を除いて、借主の中途解約は認められません。
  4. 契約に賃料の額の自動増減に関する定めがある場合は、無条件に有効です。
    普通建物賃貸借契約では、賃貸借契約書の賃料自動減額条項は有効ですが、賃料自動増額条項は、その条項の結果、家賃が近隣相場からかけ離れてしまい、借主が不当に高い家賃を取られるようなものでなければ有効と考えられます。
    しかし、定期建物賃貸借契約では、賃貸借契約書の賃料自動増額条項は、上記のような制限はなく、無条件に有効です。
Q
定期建物賃貸借契約のデメリットは何ですか。
A
1.定期建物賃貸借は契約の仕方や管理が面倒

【Q 定期建物賃貸借契約とは何ですか。どんなメリットがありますか。】で説明しましたように、定期建物賃貸借は、かなり大家さんに有利な内容であり、大家さんとしては、できるだけ活用したいところです。
しかし、定期建物賃貸借契約は、契約の仕方や管理が普通建物賃貸借契約より、かなり面倒です。
まず、契約の締結ですが、定期建物賃貸借契約は、必ず書面で契約しなければなりません。この点は、普通建物賃貸借契約でも、ほとんどの大家さんが契約書を作っていますので、特に問題ではないかもしれません。
しかし、定期建物賃貸借契約では、契約書の中に、「この賃貸借契約は契約の更新がなく、契約期間が満了すると必ず契約が終了してしまうこと」を明記しなければなりません。
しかも、契約の締結に当たって、事前に、「この賃貸借契約は契約の更新がなく、契約期間が満了すると必ず契約が終了してしまうこと」が記載された書面を、契約書とは別に入居者に対して交付して、説明をしなければなりません。
次に契約の管理ですが、定期建物賃貸借契約のうち契約期間が1年以上のものについては、大家さんは、契約期間の1年前から6か月前までの間に、借主に対して、契約期間の経過によって契約が終了することを通知しなければなりません。この通知をしないと、契約期間が満了しても、一定期間は契約が終了しません。

2.入居希望者は不安に思い、契約を躊躇する。

これから契約を締結する入居希望者にとっては、契約期間が満了すると必ず契約が終了するというのは、かなり不安なものです。
たとえば3年契約の場合、3年後に自分がどういう状況にあるか確実に予測できる入居希望者はほとんどいません。そうすると、3年後に、やっぱりこの部屋に住み続けたいということもあり得るので、3年で必ず契約が終了し、出ていかなければならないという契約には躊躇するはずです。この結果、最終的に、入居希望者が契約に至らず、なかなか借主が決まらないということになりかねません。
このような事態を避けるために、大家さんが予め定めた「再契約拒否事由」に該当しないかぎり必ず再契約することを入居希望者に約束して、定期建物賃貸借契約を締結するという方法があります。
しかし、この方法によると、大家さんは、借主が予め定めた「再契約拒否事由」に該当する行為をしない限り、再契約をしなければなりません。
このため、大家さんは、借主が「再契約拒否事由」に該当しない予想外の背信行為を行っても、原則として再契約を拒否できないというリスクを負うことになります。