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賃貸経営の法律Q&A

賃貸経営の法律Q&A

賃貸経営の法律
Q&A

弁護士
銀座第一法律事務所
大谷 郁夫

賃貸経営に関する法律について、現在、賃貸経営を営まれている方はもちろんこれから賃貸経営を始めようとお考えの方に知っていただきたいポイントをわかりやすく解説しています。

※実際のトラブル等では個別性(地域の慣習等を含む)があり総合的に判断しなければなりません。弁護士等に早めにご相談のうえ判断していただくようお願いいたします。 また、本コンテンツの内容は、平成27年1月31日現在の法律に基づき作成されております。
賃貸経営に関する法律をQ&A形式で解説しています。

契約の締結から入居まで

Q
アパートやマンションなどの建物の賃貸借契約には、どのような種類がありますか。
A
1.普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約

物を貸して賃料をもらうことを約束する契約を賃貸借契約といい、賃貸借契約については民法に規定があります。
しかし、建物の賃貸借については、借家人保護の見地から借地借家法という特別の法律があります。このため、建物の賃貸借については、まず、借地借家法が優先的に適用され、借地借家法に特に規定のない部分について、民法が適用されます。
この借地借家法では、建物の賃貸借について、主に普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の2種類の契約を定めています。
この2つのうち、普通建物賃貸借契約が圧倒的に多く、定期建物賃貸借契約は、少ないのが実情です。
なお、これら以外にも、取壊し予定の建物の賃貸借契約(借地借家法)と終身建物賃貸借契約(高齢者の居住の安定の確保に関する法律)がありますが、少し特殊な契約ですので、ここでは説明を割愛します。

2.普通建物賃貸借契約の特徴は?

普通建物賃貸借では、借主保護のために、契約の存続が強く保障されているところに特徴があります。
すなわち、普通建物賃貸借契約では、契約期間を決めるのが一般的ですが、このように契約期間が決まっている場合、大家さんが契約期間満了時に契約を更新したくないときは、予め借主に対して、更新拒絶の通知をしなければなりません。この更新拒絶の通知をしないまま契約期間が満了すると、契約は法律によって当然に更新されてしまいます。これを法定更新といいます。
また、大家さんが更新拒絶の通知をしたにもかかわらず、借主が契約期間終了時に建物に居座っているときは、大家さんは、借主に対して、速やかに異議を述べなければなりません。しかも、この大家さんの異議には、正当事由がなければなりません。正当事由とは、大家さんが自ら賃貸建物を使用しなければならない事情ですから、正当事由が認められることはほとんどありません。
大家さんが異議を述べなかったとき及び大家さんが異議を述べたけれども正当事由がなかったときは、賃貸借契約は法律によって当然に更新されてしまいます。これも法定更新です。
さらに、大家さんと借主が上記の借地借家法の規定に反する借主に不利な契約を結んでも、その契約は無効となります。

3.定期建物賃貸借契約の特徴は?

定期建物賃貸借は、契約期間が満了すると、契約の更新はなく、確定的に契約が終了するところに特徴があります。
普通建物賃貸借契約の場合、上記1で説明しましたように契約期間が満了しても、ほとんどの場合法定更新となってしまうため、賃貸借契約が極めて長期間存続し、賃貸人にとって大きな負担となっていました。
そこで、借地借家法では、書面による契約や賃借人への説明・書面交付などの手続きを踏むことを条件として、契約期間の満了により確定的に終了する定期建物賃貸借契約を認めました(詳しくは、【Q 定期建物賃貸借契約とは何ですか。どんなメリットがありますか。】参照)。

Q
建物賃貸借契約を締結する場合、契約書は必要でしょうか。また、賃貸借契約書は、どこから入手すればいいですか。
A
1.契約書は必ず作る。

建物賃貸借契約は、当事者が合意すれば成立しますので、契約書という書類は必ずしも必要ありません。
しかし、口頭での合意は、その内容が記録に残らないので、後で「言った。言わない。」というトラブルの原因となります。
特に、建物の賃貸借契約では、いろいろと細かいことを決めなければならないので、たとえ大家さんと借主とがよく話し合って納得の上合意しても、その内容を正確に覚えておくことは困難です。結局、後で合意内容について双方の意見が食い違い、トラブルとなります。
従って、建物賃貸借契約では、必ず契約書を作成するべきです。

2.賃貸借契約書の入手方法。

一般的に大家さんは、次のような方法で賃貸借契約書を入手しています。
まず、最も多いのが、借主の募集をお願いしている不動産屋さんが用意した賃貸借契約書をそのまま使用するというパターンです。
不動産屋さんが用意する契約書は、不動産屋さんごとに内容はまったくバラバラで、大家さんのために契約書の内容をよく検討して、オリジナルな契約書を作っている不動産屋さんもあれば、市販の賃貸借契約書をそのまま使っている不動産屋さんもあります。
また、契約書に大家さんに有利な条項を沢山入れると、借主に説明したり交渉したりしなければならない事項が多くなります。このため、不動産屋さんは、どうしても大家さんに有利な条項を入れたがらない傾向にありますので、注意が必要です。
次に多いのが、市販の契約書を使っている場合です。インターネットからダウンロードして使っている場合もあります。市販の契約書の場合、当たり障りのない内容であることが多く、大家さんが有利となるような工夫はあまりありません。
さらに、あまり多くはありませんが、弁護士や司法書士に依頼してオリジナルの契約書を作っている大家さんもいます。
最後に、国土交通省がインターネット上にアップしている標準契約書があります。この標準契約書は、国土交通省が作っているものですから、内容はしっかりしていますが、どちらかというと借主寄りになっています。また、ちょっと分厚いのも難点です。
(普通建物賃貸借契約について)→国土交通省のページにリンクします。
(定期建物賃貸借契約について)→国土交通省のページにリンクします。  

Q
借主を決める際には、どのような点に気を付けるべきでしょうか。
A
1.借主の決定にはできるだけ関与する。

一般的に大家さんは、借主の募集を不動産屋さんに依頼しますが、不動産屋さんは、契約が成立しないと仲介手数料をもらえませんので、どうしても審査が甘くなりがちです。
しかし、建物賃貸借契約はあくまで大家さんと借主との契約ですので、賃料の不払いその他のトラブルで損害を被るのは大家さんです。
従って、借主を決める際には、不動産屋さんに丸投げせず、大家さん自身も借主の決定に参加しましょう。

2.まず本人確認が大切。

借主を決める際に最も重要な点は、本人確認と賃料の支払能力です。
まず、本人確認ですが、写真のある身分証明書(免許証やパスポート)と住民票によって、入居希望者が本当にその人本人であるかどうかをしっかり確認しましょう。
大家さんが直接入居希望者に会わないときは、不動産屋さんにこの点を確認してもらいましょう。
自分の信用では部屋を借りられないので、他人になりすまして契約するケースもありますので、注意してください。しっかりとした大家さんや不動産屋さんは、必ず契約書に借主の免許証やパスポートと住民票のコピーを添付して保存しています。  

3.賃料の支払能力は客観的な資料で確認。

次に、賃料の支払能力ですが、入居希望者の勤務先の確認や給与額の確認をしてください。賃料の額に見合った収入のある仕事をしていないと、賃料の不払いなどの原因となり、大家さんが大変な損害を被ることになります。
支払能力の確認方法は、収入を証明する書類を提出してもらうことです。一般的には、給与明細あるいは源泉徴収票を見せてもらい、コピーを取ってください。  

4.ちょっとした工夫が問題借主の発見につながる。

新たに賃貸借契約を締結するということは、何かの理由があって前の家から転居するということです。その理由が大学への入学、転勤、結婚などの普通の事情ならよいのですが、賃料の不払いや近隣とのトラブルなどであれば、また同じ問題を起こしかねません。
こうした問題借主を見つけるためにも、住民票のコピーをもらい、転出転入を繰り返していないかなどを確認するべきです。また、さりげなく引越してくる理由を聞くことも大切です。  

Q
不動産屋さんと賃貸物件の管理契約を締結する場合、どのような点に注意が必要ですか。
A
1.どこまで頼むか、あるいは頼んでいるか確認する。

不動産屋さんというのは、宅地建物取引業者のことであり、国土交通大臣または都道府県知事から免許を得て仕事をしています。
ほとんどの場合、大家さんは、入居者の募集と契約締結について不動産屋さんに依頼しています。法律用語で言いますと、賃貸物件の契約の媒介と契約締結の代理になります。
もっとも、媒介と代理の両方を依頼しなければならないわけではなく、媒介だけを依頼して、契約の締結は大家さん自身が行うというパターンもあります。不動産屋さんが、入居者を募集して、契約内容についての説明や交渉をし、契約締結のお膳立てをしたうえで、大家さんと入居者の両方から、契約書に署名・捺印をしてもらうというパターンです。
さらに、不動産屋さんが賃料の回収、物件の管理、契約の更新などを行う場合もあります。
このように、建物の賃貸借においては、不動産屋さんの業務は多岐にわたり、不動産屋さんと締結する賃貸借管理契約は、いろいろなパターンがあります。
そこで、大家さんは、借主の募集、契約の締結及び契約の管理、賃料の回収、物件の管理、契約の更新などのうちどこまでを不動産屋さんに頼みたいのか、という点をきちんと決めておく必要があります。
また、既に不動産屋さんと契約している場合は、どこまでが契約内容となっているか確認してください。
不動産屋さんが何もしてくれないと訴えてくる大家さんに、不動産屋さんとの契約書を見せてもらうと、そもそも契約の管理を依頼していなかったというケースがよくあります。

2.賃貸借契約書の内容を確認する。

【Q 建物賃貸借契約を締結する場合、契約書は必要でしょうか。また、賃貸借契約書は、どこから入手すればいいですか。】で説明しましたように、かなりの大家さんが、借主の募集をお願いしている不動産屋さんが用意した賃貸借契約書をそのまま使用しています。
しかし、不動産屋さんが用意した賃貸借契約書は、必ずしも大家さんに有利ではないことがあります。
契約書に大家さんに有利な条項を沢山入れると、借主に説明したり交渉したりしなければならない事項が多くなります。このため、不動産屋さんは、どうしても大家さんに有利な条項を入れたがらない傾向にあります。
ですから、賃貸借契約書は、不動産屋さんに丸投げしないで、少なくとも、その内容を確認してください。
借主とトラブルになって賃貸借契約書を確認したら、賃貸借契約書に大家さんにとって重要な事項がほとんど書いてなかったというケースがありますので、注意してください。  

3.大家さんのために、まめに動いてくれる業者を見つける。

建物の賃貸借契約では、家賃の滞納、設備の故障、近隣とのもめごとなど、さまざまなトラブルが発生します。これを大家さんがいちいち対応していたのでは、たまりません。
そこで、こうしたトラブル対応をきちんとやってくれる不動産屋さんを見つけることが大切です。  

Q
最近よく建物賃貸借契約の保証会社ということを耳にしますが、保証会社とは何をしてくれる会社ですか。
A
1.保証会社とは?

借主にとって、大家さんが納得する連帯保証人を確保できなければ、契約を締結できません。逆に、大家さんも、入居はしてもらいたいが、連帯保証人がきちんとした人でないと、契約に踏み切れません。
このような借主と大家さんのニーズにこたえるために生まれたビジネスが、保証会社が行う家賃等の保証ビジネスです。今では、大多数の建物賃貸借契約で、保証会社が行う家賃等の保証が行われているといっても過言ではありません。
保証会社が行う家賃等の保証ビジネスでは、保証会社は、借主の依頼を受けて、大家さんと保証契約を締結します。
この保証契約で、保証会社は、大家さんに対し、借主が契約上支払うべき賃料等の債務を支払わない場合に、借主に代わって大家さんに支払うことを約束します。その代り、保証会社は、保証を依頼した借主から保証料を受け取ります。

2.保証会社は、大家さんの権利を代わりに行使する。

このように、保証会社は、大家さんに対し、借主が契約上支払うべき賃料等を支払わない場合に、借主に代わって大家さんに支払うことを約束します。しかも、料金を払うのは、借主です。大家さんからすれば、大家さんが抱えるリスクを、タダで保証会社が肩代わりしてくれるのです。
もっとも、保証会社は、大家さんのリスクを肩代わりすることから、保証契約上、大家さんの持っているいろいろな権利を、大家さんに代わって行使できるようにしています。もちろん、実際に作業や手続を行うのは、保証会社です。
具体的には、滞納家賃の督促、契約の解除、明渡し訴訟、明渡しの強制執行などについては、大家さんに選択の自由はなく、大家さんは、保証会社の判断に従わなくてはなりません。

3.契約内容の確認を!

保証会社の保証の内容は、会社によってさまざまですので、保証契約を締結しておけば、何でも保証されると思い込まずに、保証会社がどこまで保証してくれるのか、逆に言えば、保証してくれないのはどんなお金かをよく確認してください。
通常は、滞納家賃、管理費、共益費、駐車場代、賃料相当損害金、原状回復費用、借主の所有物の撤去費用、明渡し訴訟の費用、強制執行の費用などを保証してくれます。
これに対して、借主の自殺による損害、失火による損害、孤独死による損害、退去後のクリーニング費用などを保証しない保証会社が多いようです。
また、保証金額の限度も保証会社によって異なりますので注意してください。

4.手荒なことをする保証会社もある。

保証会社としては、家賃の滞納があった場合、借主に代わって大家さんに家賃を支払わなければならないので、滞納が続けば続くほど、損失が増えていきます。
このため、保証会社は、かなり厳しく滞納家賃の督促を行い、さらに、家賃を払わない借主を、貸している部屋から実力で排除するという手荒なことをする会社もあります。
しかし、行き過ぎた督促や借主の実力での排除は、違法行為であり、損害賠償責任を負うことがあります。もちろん、損害賠償責任を負うのは、第1次的には保証会社ですが、大家さんがこうした行為を黙認したり同意したりすれば、保証会社とともに責任を問われることがあります。
従って、保証会社を選ぶ場合は、このような手荒なことをする会社ではないかなどの評判を、よく調べた方がいいでしょう。  

Q
建物賃貸借契約では、連帯保証人をつけるのが一般的だと聞きましたが、連帯保証人とは何ですか。また、連帯保証人と契約する際に注意すべき点は何ですか。
A
1.建物賃貸借契約の連帯保証人とは?

建物賃貸借契約の連帯保証人は、借主が契約に基づいて大家さんに対して負う責任を、借主に代わって負います。ただの保証人ではなく、「連帯」保証人ですから、借主と連帯責任を負います。これは、貸主と連帯保証人は、原則として同じ責任を負うということです。
従って、滞納している賃料だけでなく、退去期限に退去しなかった場合の賃料相当損害金、退去後の原状回復費用や残置物撤去費用など、およそ借主に請求できるものは、連帯保証人にも請求することができます。
このため、財産や収入のある人に連帯保証人になってもらえば、借主の家賃滞納などがあっても、連帯保証人から支払いを受けることができます。実際に私も、多くの事案で、連帯保証人から滞納家賃を回収しています。

2.連帯保証人の人選

連帯保証人と契約する際に注意すべき点は、まず人選です。
一定の財産や収入があることはもちろん、借主の親族や上司など、借主とある程度関係が深いことが大切です。借主が賃料の不払いなどの問題を起こしたときに、連帯保証人に連絡し、連帯保証人から借主に注意をしてもらうことが可能だからです。

3.連帯保証人との契約時の注意事項

連帯保証人との連帯保証契約は、大家さんと連帯保証人との契約ですが、通常は賃貸借契約書の連帯保証人の欄に、連帯保証人に署名・捺印をしてもらう方法で契約します。
この連帯保証人の署名・捺印について、契約書を借主に渡して持ち帰ってもらい、後日、連帯保証人の署名・捺印のある契約書を持ってきてもらうという方法をとることがあります。しかし、この方法は、本当に連帯保証人自身が署名・捺印したか分からないので、とても危険です。借主が勝手に連帯保証人になるはずだった人の署名を書き込んで、判子を買ってきて押してしまうというケースもよくあります。このような場合は、たとえ賃貸借契約書に連帯保証人の署名・捺印があっても、何の効力もありません。
従って、連帯保証人の署名・捺印は、原則として大家さんの面前でしてもらってください。連帯保証人が遠くに住んでいるなどの事情で来てもらえないときは、印鑑登録をしている判子を押してもらい、必ず印鑑登録証明書の原本をもらって下さい。最も確実なのは、連帯保証人の自宅に電話をし、本当に署名したかを確認することです。  

Q
契約の更新時に借主とは更新契約書を交わしたのですが連帯保証人の署名・捺印をもらいませんでした。更新契約時に署名・捺印をしていない連帯保証人も、更新後の滞納家賃について責任を負いますか。
A
1.更新契約後も連帯保証人の責任は続くか。

普通建物賃貸借契約では、契約期間の終了時も借主が住み続けたい場合には、大家さんに「正当事由」がない限り、大家さんは更新を拒絶できません。この場合、賃貸借契約は、借地借家法の規定によって「法定更新」となり、家賃などの契約内容はそのままで、契約期間の定めだけがないことになります。この「法定更新」の場合、大家さんと借主は、更新契約書を作っていませんので、連帯保証人にも、改めて署名・捺印をもらうことができません。
また、大家さんと借主が更新の合意をし、更新契約書を作った場合でも、改めて連帯保証人に署名・捺印をもらわなかったという場合もあります。
このような場合、連帯保証人の責任はどうなるのでしょうか。
最高裁判所の判例によれば、更新後の契約について改めて連帯保証人の署名・捺印が無くても、連帯保証人の責任は、更新後の契約についてもそのまま存続します。従って、大家さんは、契約更新後も、家賃の滞納などについて連帯保証人に支払いを求めることができます。

2.更新後に連帯保証人が責任を負わないのは、どんな場合か。

ただし、最初の契約書に、更新後の契約について連帯保証人の責任を否定するような記載があれば、連帯保証人は責任を負いません。
また、連帯保証人に責任を負わせるのが酷な事情があるときは、更新後の契約について署名・捺印をしていない連帯保証人の責任は否定されることがあります。
たとえば、契約期間の満了時に既に借主が数ヶ月分の賃料を滞納しており、大家さんは更新を拒絶したり契約を解除したりできたのに、連帯保証人に連絡もせず、漫然と契約の更新をしてしまったというような場合です。このような場合には、更新後の滞納分について、連帯保証人の責任は否定されるおそれがあります。
大家さんとしては、家賃の滞納があったら、その都度連帯保証人に連絡すべきです。それによって、連帯保証人は借主に支払いを促し、滞納が解消するかもしれません。また、更新後の契約について改めて連帯保証人の署名・捺印が無くても、連帯保証人の責任を否定されることを避けることができます。

Q
賃貸借契約締結の際、借主と一緒に貸室の状態を確認した方がいいでしょうか。また、その際に注意すべき点は何ですか。
A
1.契約時の貸室の状態確認はとても重要。

建物の賃貸借契約では、契約が終了したら、借主は、借りた部屋を借りた時の状態に戻して大家さんに返還する義務があります。これを、借主の原状回復義務といいます。
ですから、借主は、自分のミスで壊したり汚したりした部分について、修理して元に戻す義務があります。もし、自分で修理できないのであれば、修理費を負担する義務があります。この修理費を、原状回復費用と呼びます。
たとえば、借主が部屋のガラスを割ったり、壁にシミをつけたりした場合は、ガラスの修理費やシミのある部分の壁紙の張替費用は、借主が負担しなければなりません。
しかし、借主が部屋のガラスを壊したり、壁紙を汚したりしたことを証明する責任は、大家さん側にあります。借主が、「窓ガラスを壊したり、壁にシミを付けたりしたのは自分ではない。」と言い張ると、大家さんは、何らかの証拠を出して、借主の仕業であることを証明しなければならないのです。
そこで、大家さんは、このような借主の主張を封じるために、賃貸借契約の締結の際に、借主と一緒に貸室の室内に入り、破損や汚れの状態を確認しておく必要があります。
この確認作業を行う時期は、できれば借主が貸室を使用できるようになるとき、具体的には、部屋の鍵を渡すときが最も適切です。

2.確認したら記録に残す。

貸室の破損や汚れの確認の方法は、まず、大家さんと借主が一緒に貸室の中に入り、貸室の中の破損している部分や汚れている部分を確認します。
確認できた破損や汚れは、必ず写真か書面に残してください。
最も良い方法は、書面と写真の両方を使う方法です。書面の場合は、貸室の見取り図に書き込んでいく方法が簡単なので、予め貸室の図面を用意しておくとよいでしょう。また、作成した書面には、大家さんと借主が立ち会ったことを確認するために、日付を記入したうえで、その場で、大家さんと借主が署名をしましょう。

Q
賃貸借契約締結時に借主から礼金として賃料の1ヶ月分を受け取りました。ところが、借主が入居前に事情があって契約を解約したいので礼金を返してほしいと言ってきました。この場合、礼金を返さなければなりませんか。
A
1.礼金とは何か。

建物の賃貸借契約では、契約締結時に借主から大家さんに礼金を支払うことがあります。最近では、空室対策として礼金のない場合もありますが、依然として礼金をとる場合の方が多いようです。
礼金は、部屋を貸してもらったことに対するお礼として、借主が大家さんに支払うお金などと言われますが、実は、その法的性質や根拠がよくわからないものです。
たとえば、物を買うときには、代金を支払うだけで礼金を支払うことはありません。それと同じで、物を借りるときには、賃料を支払えばよく、礼金を払わなければならない法的な根拠はありません。
おそらく、建物の賃貸物件が少なかった時代、つまり賃貸市場が売手市場で大家さんの方が借主より有利であった時代に、部屋を貸してもらうために大家さんに賃料以外のお金=お礼を払うという慣習があり、それが残ったものなのではないでしょうか。

2.契約書に返還義務を否定する条項を入れる。

このように、礼金は、その法的性質や根拠が明確ではなく、借主からすると余分なお金を取られている感覚があるため、この事案のように、借主が入居前や入居直後に事情があって賃貸借契約を解約した場合に、返還を求められてトラブルとなることがあります。
そこで、こうした場合に備えて、念のため礼金の返還義務を否定する条項を契約書に入れておくべきです。

Q
当初月額8万円の賃料だったのですが、契約の更新の際に借主から賃料を4000円減額してほしいと言われました。どのように対応すればいいでしょうか。
A
1.借主が賃料を減額する手続きは?

借主が賃料を減額する手続きは、まず、借主が、大家さんに対し、自分が適正と思う金額に家賃を減額して欲しいと申入れます。
これに対して、大家さんが了解すれば、賃料は減額されたことになります。しかし、大家さんが了解しない場合は、賃料の減額は確定しません。この場合、借主は、契約書で定める賃料を支払い続けなければなりません。
その上で、借主は、家賃の減額を求める調停を裁判所に申し立てなければなりませんが、調停で話し合っても合意ができない場合は、調停不成立となります。
そして、調停不成立になった場合は、借主は、賃料の減額を請求する訴訟を裁判所に起こすことになります。
借主は、面倒だからと言って、調停を飛ばして直ちに訴訟を起こすことはできません。特別な事情がある場合を除いて、まず調停をして、調停不成立となった場合に初めて訴訟を起こすことができることが法律で決められています。
借主が、賃料の減額を請求する訴訟を起こした場合には、裁判所が審理して、判決によって適正な賃料額が決定されます。

2.借主が一方的に減額した賃料を支払ってきた場合は?

借主が、一方的に減額した賃料を払ってきた場合は、契約で決まっている正規の賃料を支払っていないことになりますので、大家さんは賃料不払いを理由として、契約を解除することができます。

3.減額請求に対する大家さんの対応

このように、借主は、裁判所における調停や裁判をせずに、一方的に賃料を減額することはできません。
また、借主が一方的に減額した賃料を支払ってきた場合には、大家さんは、賃料不払いを理由に契約を解除することができます。
ですから、大家さんとしては、借主から賃料の減額請求があっても、慌てることなく今迄どおりの家賃を受け取り、借主が、調停を起こしてくるのを待つことになります。

Q
当初月額8万円の賃料だったのですが、契約の更新の際に賃料を4000円増額したいと思います。どのような手続きを取ればいいでしょうか。
A
1.大家さんが賃料の増額請求をする場合の制限

大家さんが賃料の増額請求をする場合の手続きも、【Q 当初月額8万円の賃料だったのですが、契約の更新の際に借主から賃料を4000円減額してほしいと言われました。どのように対応すればいいでしょうか。】で述べた賃料の減額手続きとほぼ同じですが、大家さんについては、借主の賃料の減額請求にはない制限が1つあります。
それは、賃貸借契約書に一定期間賃料の増額はしないことを定めた条項がないことです。この条項があると、大家さんは、この期間内は賃料の増額ができません(なお、賃貸借契約書に一定期間賃料の減額をしないことを定めても、この条項は、借地借家法に違反する借主に不利な条項として無効となります。)。

2.賃料増額請求の具体的手続き

具体的には、まず、大家さんが、借主に対し、自分が適正と思う金額に賃料を増額して欲しいと申入れます(ちなみに、【Q 賃料の減額請求訴訟や増額請求訴訟の審理や判決には、どのようなリスクがありますか。】で述べるように、判決による賃料の増減の決定の効力は、増減の請求をしたときに遡ります。ですから、いつ増減の請求をしたかが極めて重要になってきます。従って、大家さんが増額請求をするときは、必ず内容証明郵便を使い、記録が残るようにして下さい。)。
これに対して、借主が了解すれば、賃料は増額されたことになります。しかし、借主が了解しない場合は、賃料の増額は確定しません。この場合、借主は、賃貸借契約書で定める賃料を支払い続ければよく、大家さんの主張する増額された賃料を払う必要はありません。もし、大家さんが、「増額された賃料でなければ受け取らない。」と言う場合は、借主は、賃貸借契約書で定める賃料を法務局に供託することになります。
その上で、大家さんは、賃料の増額を求める調停を申し立てます。調停で話し合っても合意ができない場合は、調停不成立となります。
そして、調停不成立になった場合は、大家さんは、賃料の増額を請求する訴訟を起こすことになります。

Q
賃料の減額請求訴訟や増額請求訴訟の審理や判決には、どのようなリスクがありますか。
A
1.高額な鑑定費用を負担させられることがある。

ある部屋についてどの程度の家賃が適正かは、裁判官だけでは判断できません。そこで、裁判所の選んだ鑑定人に鑑定意見を出してもらうことになります。
鑑定人になるのは、不動産鑑定士ですが、鑑定人の報酬は、簡単な事件でも1件30万円程度です。難しい事件になると、100万円を超えることもあります。
この報酬は、鑑定費用として裁判所が鑑定人に払う形を取りますが、実際には訴訟を起こした側が、予め裁判所に預けておいたお金です。そして、最終的には、判決によって、大家さんと借主のどちらがどれだけ鑑定費用を負担するか決められます。場合によっては、鑑定費用は全額大家さんの負担となるおそれがあります。

2.年率10パーセントの利息の支払義務もある。

賃料の増額や減額を求める裁判では、裁判所の判決によって適正な賃料額が決定されますが、その決定は、増額あるいは減額の請求があった時点に遡ります。
たとえば、平成24年4月10日に、借主が大家さんに、賃料を月額8万円から月額7万5000円に減額するように請求をしたとします。そして、平成26年6月10日に賃料を7万5000円に減額する判決が確定したとします。
この場合、賃料の減額は、借主が大家さんに減額の請求をした平成24年4月10日に遡って認められます。
大家さんは、この間、賃貸借契約書どおりの賃料を受け取っていますので、約2年2ヶ月あまりの間、1ヶ月当たり5000円家賃を多く取りすぎていたことになります。
大家さんは、この多く取りすぎた金額について、受けとった時点から利息を付けて返還しなければなりません。しかも、その利息は、年率10パーセントです。

3.調停で解決したほうが得な場合もある。

このように、賃料の増減を請求する訴訟には、鑑定費用と高い利息の支払義務という2つのリスクがあります。
従って、大家さんとしては、近隣の家賃相場をよく調べ、敗訴の可能性があれば調停段階の話し合いで解決し、無用なリスクを負わないようにするべきです。

Q
賃貸借契約書に契約の更新ごとに賃料を2000円ずつ増額するような条項を入れた場合、このような条項は有効ですか。
A

契約書に賃料を自動的に増額させる条項を入れたら、その条項は有効でしょうか。例えば、家賃を2年ごとに5パーセントずつ増額させるというような条項は、有効でしょうか。
このような条項は、無制限ではありませんが、一定の範囲で有効とされています。
【Q 当初月額8万円の賃料だったのですが、契約の更新の際に賃料を4000円増額したいと思います。どのような手続きを取ればいいでしょうか。】で説明しましたように、賃料の増額は、大家さんと借主の話し合いがまとまらない限り、裁判所の手続きによらなければならないことが借地借家法で決められています。
しかし、賃貸借契約書に賃料の自動増額条項を入れた場合に、この条項が無条件で有効とされると、上記の借地借家法は簡単にすり抜けられてしまい、有名無実になってしまいます。
そこで、裁判所は、賃料の自動増額条項について、その内容があまりにも大家さんに有利で、借主にひどい不利益を与えるものでなければ有効であるとしています。
たとえば、家賃を2年ごとに3パーセント上げていっても、近隣の賃料相場が上昇していれば、必ずしも近隣の賃料相場からかけ離れた賃料にはなりません。
また、大家さんの事情や借主の事情から、最初の家賃をある程度安い金額に設定し、契約を更新する毎に少しずつ家賃を上げていくという場合であれば、やはり近隣の賃料相場からかけ離れた賃料にはなりません。
このように、契約書の賃料自動増額条項は、その条項の結果、家賃が近隣相場からかけ離れてしまい、借主が不当に高い家賃を取られるようなものでなければ有効と考えられます。

Q
賃料の自動増額条項(傾斜家賃制度)を活用して空室対策ができると聞きましたが、どのような方法ですか。
A
1.賃料自動増額条項(傾斜家賃制度)を活用した空室対策

 【Q 賃貸借契約書に契約の更新ごとに賃料を2000円ずつ増額するような条項を入れた場合、このような条項は有効ですか。】で説明しましたように、賃料自動増額条項は、その条項の結果、家賃が近隣相場からかけ離れてしまい、借主が不当に高い家賃を取られるようなものでなければ有効であると考えられます。
そこで、この賃料自動増額条項を活用して、空室対策をすると言うことが考えられます。空室の目立つ物件を持っている大家さんは、何とか空室を埋めたいと考えます。この場合、賃料の減額が一つの空室対策となります。 しかし、無闇に家賃を下げると、とりあえず空室は埋まりますが、安い賃料のまま長期間住み着かれてしまい、大家さんにとって逆に不利益になることがあります。 そこで、「とにかく空室を埋めたい。しかし長期間安い家賃で住み続けられるのは困る。」という大家さんの希望を叶える方法として、先ほどの賃料自動増額条項を使った傾斜家賃制度が考えられます。

2.空室対策の具体的内容

最初の賃料は安くしておいて、契約更新毎に少しずつ賃料を増額し、何度目かの更新で、近隣の賃料相場に追いつくという方法です。
例えば、同条件の部屋の近隣の賃料相場が月額10万円なら、最初の契約時は月額8万円に設定し、契約を更新する毎に賃料を1万円ずつ増額していくという条項を入れておくのです。
このような賃料自動増額条項であれば、契約期間が2年の場合は、契約後4年経過してやっと賃料相場に追いつきます。ですから、この賃料自動増額条項は、賃料が近隣相場からかけ離れてしまい、借主が不当に高い賃料を取られるというようなものではなく、有効な条項と考えられます。
大家さんからすると、取りあえず賃料を安くすることによって空室を埋めるととともに、将来的には近隣の賃料相場に追いつきますので、長期間安い家賃で住み続けられるという危険はありません。
借主からしても、安い賃料で入居が可能であり、将来賃料が上昇しても、あくまで近隣の賃料相場に追いつくだけですから、特に不利益は受けません。しかも、もし近隣の賃料相場を払うのが嫌なら、その前に引っ越して、賃料の安い期間だけ借りるという美味しいとこ取りをすることも可能です。

Q
賃貸借契約書には、賃料と管理費を分けて記載した方がよいですか。
A

たとえば賃料が8万円で管理費が4,000円の場合、賃貸借契約書にこれを合算して賃料84,000円と記載したとすると、何か不都合があるでしょうか。
このように「賃料84,000円」と記載した場合と「賃料8万円、管理費4,000円」と分けて記載した場合とでは、結局大家さんが受け取る金額は同じですので、特に不都合はないようにも見えます。
しかし、【Q 当初月額8万円の賃料だったのですが、契約の更新の際に賃料を4000円増額したいと思います。どのような手続きを取ればいいでしょうか。】で説明したように、賃料を増額するには、借地借家法に定める一定の手続きを取らなければなりませんが、管理費の増額には、この借地借家法の適用はありませんので、管理費は、賃料のように面倒な手続きを取らなくても、必要に応じて増額することができます。
従って、賃料84,000円と記載した場合には、例え実質的に管理費の増額であっても、賃料増額の手続きを取らなければならなくなるという不都合が生じます。 このような問題が生じるのは、特に分譲マンションを賃貸しているような場合です。
たとえば、ある大家さんが分譲マンションの1室を所有していて、この部屋を賃貸しているとします。
この場合、分譲マンションですから、所有者は毎月一定額の管理費を管理組合に支払わなければなりません。このため、分譲マンションを賃貸している大家さんは、通常、借主との賃貸借契約書において、大家さんが管理組合に支払う管理費を、そのまま借主に管理費として負担させる条項を入れています。
そこで、もし、分譲マンションの管理費が管理組合の決議で増額された場合には、大家さんは、分譲マンションの管理費が増額されたことを理由として、借主との賃貸借契約における管理費を増額します。これは、管理費の増額ですので、賃料増額の手続きを取る必要はありません。
しかし、もし、借主との賃貸借契約において、管理費を賃料に含めて総額で記載していると、例え分譲マンションの管理費の値上げを理由としていても、賃料の値上げである以上、賃料増額の手続きを取らなければならなくなります。
このように、管理費を安易に賃料に含めて記載すると、管理費の増額が必要になっても、簡単には管理費を増額できなくなりますので、注意が必要です。