想像を超えていた?
お隣の国の住宅賃貸システム

住宅事情
想像を超えていた?お隣の国の住宅賃貸システム

「大人未来ラボ」シーズン2の第2回目は、国によってさまざまに異なる住宅事情をレポートします。地理的にも文化的にも日本に近い中国や韓国の住宅事情は、日本と似ているのか、それとも……? 社会保障制度が手厚いことで有名な北欧諸国の住宅事情は、どんなものなのか? 興味はつきません!

「持ち家比率」は約50~60%が一般的

まずは、それぞれの国(地域)での世帯ごとの「持ち家と貸家の比率」を、住んでいる皆さんにおおよその感覚でお答えいただきましょう。

自国民はほぼ100%が持ち家という回答があったのは、アラブ首長国連邦(以下UAE)のドバイ。

同じく、地元の人は持ち家がほぼ100%なのが、中国の北京です。

「北京人(北京戸籍の人)はほぼ持ち家で、地方出身者は持ち家と貸家が半々といった感じでしょうか。中国では、戸籍住所は簡単に変更できません」(中国)

「韓国はマンション(韓国ではアパートといいますが)社会で、都市になるほど一戸建てよりもマンションで暮らす人が多く、人気もあります。韓国には独自の住宅契約システムがあり、購入したうえで居住しているいわゆる“持ち家”の場合と、大家などがいる状態で借りて居住している場合の割合は、半々ぐらいだと思われます」(韓国)

ちなみに、ノルウェーの持ち家率はおよそ60%とのことでした。日本全国の持ち家世帯率が61.7%(2013年)(*1)ですから、地元の人に限定しなければ、いずれの国でも持ち家率は50~60%前後と考えてよさそうです。

230平方メートルの広さでも❝かわいいおうち❞?

230平方メートルの広さでも❝かわいいおうち❞?

次は、持ち家の一般的な広さについて聞いてみました。

「持ち家といっても、一戸建て、マンションなどで差があります。年齢層と家族構成、各家庭の経済事情によっても千差万別なので、なかなか一口には言えません」(韓国)

「一般的には、100平方メートルぐらいです。独身者で70平方メートル、家族住まいで130平方メートルといったところでしょうか」(中国)

「ドバイローカル(UAE人)と外国人労働者などの間で、大きな格差があります。私が住んでいたホテルレジデンスは230平方メートルぐらいで、外国人の住居としてはそれほど狭くなかったはずですが、UAE人の友だちからは『かわいいおうちね』といわれていました(小さいおうちという意味も含まれていたと思います)」(ドバイ)

日本の持ち家の1住宅あたりの延べ面積は120.93平方メートル(2013年)(*1)、東京都の持ち家の1住宅あたりの延べ面積は90.7平方メートル(2013年)(*2)なので、中国と日本の持ち家の広さは同じくらいのようです。一方、ドバイでは、230平方メートルの広さがあっても、「かわいいおうち」なのだとか。さすがは、世界中の富が集まるといわれる街ですね!

韓国では、家賃は実質❝無料❞!

賃貸住宅についても、聞いてみましょう。一般的な貸家の1カ月の家賃の相場は?

「オスロでは、間取りよりも、どの地域に住むかによって、価格が変わってきます。人気のサンクトハンスハウゲン地区なら高め、15平方メートルで約88,500~150,450円(5,000~8,500ノルウェー・クローネ)、 40平方メートルで約265,500円(15,000ノルウェー・クローネ)、 60平方メートルで約318,600円(18,000ノルウェー・クローネ)といったところです。一人なら、友だちづくりも兼ねてシェアすれば、約88,500円(5,000ノルウェー・クローネ)から見つけられます。『finn.no』というサイトを自分で使いこなせると、よりよい条件や価格で家具や住居などを見つけることができます」(ノルウェー)

「ワンルームのようなフラットで、1カ月400,000円ぐらいからです。もちろん、場所によって、価格差はありますが……」(ドバイ)

「エリアによって差がありますが、北京市内(中心部に通える範囲)の安い地域の安い物件(エレベーターなし、バスタブなし、シャワーのみ)が70平方メートルで65,600円(4,000人民元)程度。高級エリアになると、安い物件が70平方メートルで約114,800円(7,000人民元)、普通の物件(エレベーターあり、バスタブあり)が70平方メートルで164,000円(10,000人民元)ぐらいです」(中国)

ほかの国や地域の家賃が1カ月単位であるのに対して、韓国では2年単位での家賃となります。

「区(地域)によって差があるので、難しいところですが……25~35坪が最も多く建設される家族向けと考え、一般的な坪数基準を30坪(約99.17平方メートル)として話をします。大邱全体で、坪あたり90~100万円(900万~1000万大韓民国ウォン)程度。そのため、30坪で平均2,800万円(2億8000万大韓民国ウォン)ほどです」(韓国)

今回調査した国や地域は、一見して、東京よりも家賃が高いところばかり。唯一、中国の北京が、東京と同等、もしくは少々安いぐらいでしょうか。お金持ちの集まるドバイ、あらゆる物価が高いノルウェーは、やはり家賃も高くなっています。

目を引くのが韓国です。韓国の家賃制度は独特で、保証金に加えて毎月決められた額の家賃を支払う「ウォルセ」という契約形式のほかに、賃貸契約時にまとまった保証金を支払うことで月々の家賃を支払う必要がない「チョンセ」という契約形式があります。今回報告があったのは、チョンセの場合です。韓国での賃貸住宅の一般的な契約期間は2年。上記の金額を単純に月割にすれば、約117万円になります。「なんで、そんなに高いの?」と思われたかもしれませんが、実はチョンセでは契約期間終了時に保証金が全額返金されます。家主は、保証金を運用して、利益を得るのです。最初にまとまったお金は必要であるものの、ある意味では借主にとって家賃は❝タダ❞。考えようによっては、かなりお得な制度です。ちなみに、ウォルセの場合でも、保証金は全額返金されます。

敷金、保証金、不動産仲介手数料などのシステム、契約期間についても、くわしく聞いてみましょう。

「ノルウェーでは、賃貸住宅は『finn.no』というサイトを利用して自分で見つけ、大家と直接連絡をとるのが一般的なので、仲介手数料はありません。日本の『敷金・礼金』は『デポジット』としてひとつにまとめられ、私の場合は家賃の3カ月分を支払いました(大家によって異なり、1~2カ月分の場合もあります)。一般的な契約期間は1年間です」(ノルウェー)

「不動産会社が、コミッションを得ていることがあります。契約期間は、1年間をはじめとして、さまざまです。途中解約の条件なども、契約書に細かく記載されています」(ドバイ)

「仲介手数料は大家が負担し、概ね家賃の1カ月分。敷金、礼金などはありません。保証金については大家と借主で交渉し、通常、家賃の1~3カ月分を支払います。家賃を3カ月、6カ月、1年分などと、まとめて支払うのが特徴です。長期間分をまとめて支払うと、保証金が減額されたり、なくなったりすることも。一般的な契約期間は1年間で、家賃の見直しは毎年行われ、ここのところは数十%ずつ値上りしています」(中国)

「契約期間は2年間が一般的なので、不動産仲介料もそれをもとに算出されます。2年分の家賃が約500万円(5,000万大韓民国ウォン)未満は取引額の0.5%以内、約500万円(5,000万大韓民国ウォン)以上約1,000万円(1億大韓民国ウォン)未満は0.4%以内、 約1,000万円(1億大韓民国ウォン)以上約3,000万円(3億大韓民国ウォン)未満は 0.3%以内、約3,000万円(3億大韓民国ウォン)以上は0.8%以内で、当事者間で合意するように定められています。ただし、家賃が約500万円(5,000万大韓民国ウォン)未満の場合では約20,000円(20万大韓民国ウォン)、約500万円(5,000万大韓民国ウォン)以上約1,000万円(1億大韓民国ウォン)未満の場合では約30,000円(30万大韓民国ウォン)を超えてはいけません。敷金・礼金などの支払いはありません」(韓国)

住宅の賃貸に関して、独特の制度がある国といえば、スウェーデンにも触れないわけにはいきません。スウェーデンの賃貸住宅事情について、現地から直接レポートをお届けします!

都会も田舎も家賃が平等?スウェーデンのアパート

スウェーデンの住宅といえば、北欧のデザイナー家具が並んでいる洗練された住まい……そんなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。実際、冬が暗く長いこの国では、家の中のインテリアにこだわる人がたくさんいます。しかし、その肝心な家が容易に手に入らないのも、スウェーデンという国の特徴です。

スウェーデンには日本の基礎自治体に当たるコミューンが290あり、そのうちのなんと255ものコミューンで住宅不足が生じています(2017年)。この問題は都市部に限らず全国的なもので、大学が新入生を迎える秋には入学は決まったけれど住むところがないという学生のニュースが必ず取り上げられるほどです。それもそのはずで、住宅の中でも特に不足しているのが賃貸アパート。学生や若者が手ごろな値段で手っ取り早く借りられる賃貸アパートの数が圧倒的に少なく、スウェーデンでアパートを借りるのはまさに至難の業といえるでしょう。

それでは、スウェーデン人たちがどのようにしてアパートを見つけているかというと、多くは「また貸し」をしてもらうのです。このまた貸し契約のことを、スウェーデンでは「第二契約」といいます。賃貸アパートを自分のものとして契約する「第一契約」に対しての、「第二契約」という意味です。

「第一契約」でアパートを借りるには、アパート会社の順番待ちの長い列に並ばなければなりません。特にストックホルムなどの大都市では、子どもが生まれてすぐに並ばないと、その子どもが成人になったときにアパートが借りられない……というほどの長い順番待ちとなっています。

「それなら、また貸しの『第二契約』でもよいのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、そうは問屋が卸さないのです。スウェーデンでは、本来第一契約をしている人が第二契約で同じ人に2年貸し続けると、第一契約の権利が第二契約で借りている人に移ってしまいます。そのため、第二契約はほとんどの場合2年で打ち切られ、第二契約で借りていた人はその後も第二契約の物件を転々とする羽目に陥ってしまうのです。加えて、第二契約の家賃は第一契約の2割増し程度が一般的で、家賃が割高になるのもデメリットです。

スウェーデンの賃貸住宅事情は、なぜこんなことになってしまったのでしょう? アパートの賃料に市場価格が導入されていなかったのが、その大きな理由といえます。ストックホルムの超一等地でも郊外の田舎でも、広さが同じぐらいなら、賃料もほぼ変わりません。利益を上げにくいために、事業としての魅力に乏しく、賃貸アパートの建設は手つかずのままになっていたのです。

これでは住宅不足が解消されないと、数年前より新築の賃貸アパートに関して建設後数年間は市場価格の設定が許され、参入企業も増え、建設ラッシュが起きました。こうして徐々にアパートが増えつつあるスウェーデンですが、新築賃貸アパートの家賃は従来のアパートの家賃の倍近くまで値上がりし、若者や学生、年金生活者や低収入者は住むことができないという問題が新たに生まれています。以前のようにアパートの市場価格をなくせばよいとの意見もあるのですが、また賃貸アパート不足に拍車がかかるかもしれず、問題は一朝一夕には解決しません。スウェーデンの賃貸住宅事情からは、この国が社会資本主義といわれる一面が垣間見えます。

その他お住いの地域の住宅事情あれこれ

「私自身は、オスロの中心部から地下鉄で20分ほどの山の上の方、オスロやフィヨルドを見渡せるエリアに住んでいます。冬になると雪が積もるので歩くのは大変ですが、都市中心部から一気に自然の中に移動できるのはよい気分転換になっています」(ノルウェー)

「私の住んでいる地域は、共有施設が充実していて、徒歩圏内にメトロがあるのが便利です」(ドバイ)

「家具付き、電化製品付きが当たり前なので、即日入居可能。住居や家具、家電の破損については、日本ほど厳しくなく、少しの汚れや破損で保証金を請求されることはあまりありません。家電などが故障した場合にも、基本的には大家の負担となります」(中国)

「保証金が全額返還される、つまり無料で居住できるのは、チョンセの大きなメリットです。ただし、その金額はかなりの高額(目安として、該当物件を購入する場合の少なくとも6~7割以上。人気物件なら、8~9割に達することも)なので、ある程度の経済力がないと利用できない点はデメリットといえるかもしれません。また、賃貸中の家主の資金運用成績が芳しくないと、退去時に保証金をなかなか全額受け取れないことがあります。契約を結ぶ前に、家主の経済環境なども把握しておくとよいでしょう」(韓国)

住宅事情は、国や地域によってさまざまです。同時に、住んでみたいと感じる場所も、それぞれの人によって異なります。あなたが住んでもよいと思えるところはありましたか? 

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2018年11月時点のものです。

※ 為替レートは2018年9月22日時点のものです。

<取材協力>
ノルウェー(オスロ)鐙 麻樹、アラブ首長国連邦(ドバイ)西田 麻紀、中国(北京)鈴木 晶子、韓国(大邸)松田 カノン、スウェーデン(オスモ)サリネン れい子
*1 「平成25年住宅・土地統計調査結果の概要」(総務省統計局)
*2 「社会生活統計指標-都道府県の指標-2017」(総務省統計局)

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