物価が高すぎて、
国境を越えて買い物に行く国がある?

生活費・物価

ところ変われば、法律や習慣、暮らしぶりも変わります。あなたが知っているつもりの国でも、まだまだ知らない一面がきっとあるはずです。海外で実際に暮らす皆さんに取材やアンケートを実施し、日本との違いを浮き彫りにする「大人未来ラボ」。シーズン2では、前回とは違う国や地域からのレポートをお届けします。第1回目は、「生活費・物価」についてです。

卵1個が驚きの118円!その国は……?

ベーシックな食品から見てみましょう。まずは卵です。

日本では鶏卵は4個入り、6個入り、10個入りなどのパックで売られていますが、同様にパック入りで報告があったのはノルウェー、アラブ首長国連邦(以下UAE)のドバイ、韓国です。

ノルウェーでは6個入りパックで約708円(40ノルウェー・クローネ)、ドバイでも6個入りパックでこちらは約145円(4.73UAEディルハム)。韓国では、1等級が15個入りパックで約358円(3,580大韓民国ウォン)でした。

中国ではパック入りの鶏卵も流通していますが、パック入りは価格にバラつきがあるということで、今回は最も一般的な量り売りのものを採用します。500gで約90円(5.5人民元)です。日本のMサイズの鶏卵1個あたりの重さの中間値がおよそ61g(*1)なので、500gだと大体8個分の重さでしょうか。

比較しやすいように、1個あたりの価格に換算します。

卵1個あたりの価格

日本を含む中間の3カ国は価格が似通っているので、このあたりが世界的な相場といえるかもしれません。ちなみに、前回の調査では、最安値はドイツの約21.7円、最高値はニュージーランドの約41.5円でした。つまり、調査時期の違いが約1年あるとはいえ、最安値、最高値とも更新されたことになります。それにしても、鶏卵1個が約118円もするノルウェーって! 

さすが産油国! ガソリンはドバイが安い

ノルウェーの物価の高さが気になりますが、鶏卵だけが特別なのでしょうか? ほかのものについても、比較したいところです。レギュラーのガソリン1Lは、ハウ・マッチ?

ガソリン1Lあたりの価格

注目のノルウェーでは、約283.2~300.9円(16~17ノルウェー・クローネ)。やっぱり、高い! 一方、ドバイで約80.5円(2.63UAEディルハム)と安いのは、UAEが産油国だからでしょうか。同じ東アジアにある3カ国では、鶏卵に引き続き、中国<日本<韓国という物価順になっています。物価だけでみると、中国もなかなか暮らしやすい国といえそうです。

習い事の授業料が高いのは教育熱心だから?

卵もガソリンもほかの国や地域よりもはるかに高額なノルウェー。想像するのも恐ろしいですが……、ありとあらゆるものがこの調子なのでしょうか?

「北欧の中でも、ノルウェーは特に物価が高いですね。日本でのように、友人などと気軽に外食などをしていたら、すぐにお金がなくなります。たとえば、パンでさえ、500~770gで安くても531~708円(30~40ノルウェー・クローネ)はします。お酒やタバコなどは、さらに割高です。ビールは500mlで大体620円(35ノルウェー・クローネ)前後。そのため、空港の免税店や、隣国のスウェーデンまでわざわざ買いに行く人もいるほどです」(ノルウェー)

ノルウェーに住むには、少々覚悟が必要かもしれません……。もっとも、ほかの国や地域にも、日本と比べて割高なものはあります。

「VAT(付加価値税)がスタートし、免税天国ドバイの終わりと同時に、物価の上昇も感じられます。炭酸飲料はVATが100%かかるので、それまでの倍額に値上がりしました。洗濯洗剤『アリエール』も580円(19UAEディルハム)ぐらいするので、日本よりも割高です」(ドバイ)

「卵、牛乳もそうですが、中国では品質によって価格が大きく異なります。一般の中国人が購入するものは比較的安価な一方、外資メーカーのものや、オーガニック表示の安全食品など、日本と同様の品質を求めれば、価格はグッと上がります。とにかく高価なのは、チョコレート。最もポピュラーな『DOVE』のチョコで約131.2円(8人民元)。その他の板チョコ(100g)は、約246~328円(15~20人民元)するのが当たり前です。中国でも人気の『ゴディバ』は、32個入りで約10,988円(670人民元)と、日本のほぼ倍の価格! コーヒーも、日本より高めですね」(中国)

「スーパーの野菜など、食品類は全体的に日本より高く感じます。そのほかでは、習い事の授業料が高いですね。たとえば、水泳教室は、1回50分の授業が月4回で、14,000円(14万大韓民国ウォン)程度。美術教室は、1回50分の授業が月4回で、10,400円(10万4000大韓民国ウォン)ほどします」(韓国)

やはり、ノルウェーは、全体的に物価が高いようです。もちろん、そのほかにも、「生活費・物価」の高い国や地域はあります。アメリカ最大の都市、ニューヨーク(以下NY)もそのひとつ。実際にそこで生活している方に、NYの「生活費・物価」事情をレポートしてもらいました。

米国随一の大都市では、家賃&外食費がケタ違い!

とにかく何でも高いと思われているNYですが、まさにその通り。不動産は日本とはケタ違いの高騰ぶりを見せつけており、マンハッタンの家賃も今やシェアアパートの1室ですら100,000円が当たり前。一人暮らし用の1Kのアパートを探すとなると180,000円以上はかかります。それも、ドアマンやエレベーターつきのアパートではなく、ごく簡素な古い建物です。年収1000万円の家庭が中間層という街だけに、住宅事情は世界においても特殊だといえます。

食費はというと、レストランやデリバリー、テイクアウトなどの外食費がかなり強気です。平日のランチのテイクアウトのサンドイッチで約900円(8米ドル)はしますし、ファストフードでもミールセットなら同じぐらい。レストランでのランチでも、パスタが約1,800円(16米ドル)、それに税金やチップが加われば約2,300円(21米ドル)もします。日本でのように、レストランで1,000円ランチなんて、まずありえません! ディナーにしても、お酒1杯に前菜とメインをいただくと、すぐに60米ドル(約6,600円)は超えてしまいます。

一方で、スーパーで購入する食材は、日本よりも安い印象です。卵が12個で約330円(3米ドル)ほど、牛乳が2Lパックで約330円(3米ドル)。もちろん、オーガニックとなると、その2倍の値段になりますが。ケールが2束で220円(2米ドル)、ネギも220円(2米ドル)、バナナが1房約110円(1米ドル)弱と、野菜や果物は日本のそれよりもサイズや量が大きくて、実質的にはかなり割安です。お米が2キロで約990円(9米ドル)、乾燥パスタが450g入りで約110円(1米ドル)なので、穀物も手ごろといえるでしょう。それでも、自炊をほとんどしないという人も少なくないのは、やはり富裕層が多い街ならではといえるでしょうか。

また、生活品の中ではトイレットペーパーの値段が高く、メジャーブランドのものなら12ロールで約880円(8米ドル)の商品も珍しくありません。そのため、各ディスカウントストアやスーパーがオリジナルの品を割安の値段で提供していますが、それでも約550円(5米ドル)くらい。洗濯用液体洗剤は1Lボトル1本約880円(8米ドル)。築50年以上の建物も少なくないNYでは、自宅内に洗濯機を置けない場合もあり、アパートビル内の共同ランドリールームや近所のランドリーを利用して洗濯を行なっています。洗濯機の使用が1回約275円(2.50米ドル)で、乾燥機の使用も同額です。日本のように自宅に洗濯機があり、毎日洗濯をするのが当たり前という生活は、実はNYではとても贅沢な暮らしだといえます。

こうして書いてきて、あらためて気づかされるのが、NYの暮らしにくさ。我ながら、ここでよく生き残れているなあと感心せざるをえないほどです。とはいえ、移民が多く暮らす街なので、ディスカウントストアが充実しており、各国のコミュニティに根ざした個人商店を利用すれば、生活費を抑えられるという側面もあります。そして、何より、この街には高い志をもった人たちが集い、切磋琢磨して生きています。それこそが、物価の高さを差し引いても余りある魅力であり、私たちがこの街で暮らす大きな理由なのです。

今、滞在費が安く済ませられそうなのは中国

日本で買うより高くつくものばかりでなく、お買得なもの、お手ごろにできることについても知りたいですよね。それぞれの国や地域では、どんなものが安いのでしょう?

「格差を助長しないように、文化イベントには政府や自治体が補助金を出していることが多く、音楽コンサート、オペラハウス、フェスなどのチケットは安価な場合があります。また、オスロは浅煎りコーヒーのレベルが高い街として知られており、高級なコーヒー豆、スペシャルティコーヒーが1袋250gで約1,416~2,124円(80~120ノルウェー・クローネ)と、日本より安く買えることも」(ノルウェー)

「『スニッカーズ』は、1本で約70.4円(2.3UAEディルハム)。キャンディーバーが、日本と比べて安いかもしれません。最近は物価が上昇しているので、正直なところ、安いと感じられるものは少ないですね」(ドバイ)

「お酒、タバコなどの嗜好品は、とても安いです。ビールは近年やや値上がりしましたが、それでも一般的な大ビンで約73.8円(4.5人民元)。近年急成長している『雪花』ビールは330mlで約33円(2人民元)弱で、ミネラルウォーターよりもお買得です。タバコは、人気の中南海(金装8mg・20本)が1箱約114.8円(7人民元)。もっと安いものもあります。そのほかでは、公共料金が格安です!」(中国)

「韓国の物価が安いというのは、もうひと昔前の話。近年の韓国では、日本と比べて安いものはそれほどありません。日本より安いのは、バス、地下鉄などの公共交通機関やタクシーの料金。それから、韓国料理や、韓国焼酎、マッコリなどの一部の酒類。韓国料理の外食費は日本よりも断然安く、逆に洋食系の外食費は日本と比べて高い傾向があります。映画館の入場料も、日本の半額程度なので、安価です」(韓国)

お得感のあるショッピングや外食を目当てに、ひところは日本人観光客がよく訪れていたドバイや韓国でも、物価が上昇しているようです。それに比べると、中国での滞在費はまだ安く済ませられるかも?

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2018年11月時点のものです。

※ 為替レートは2018年9月22日時点のものです。

<取材協力>
ノルウェー(オスロ)鐙 麻樹、アラブ首長国連邦(ドバイ)西田 麻紀、中国(北京)鈴木 晶子、韓国(大邸)松田 カノン、ニューヨーク(ブルックリン)小松 優美
*1 日本卵業協会HP「タマゴQ&A」色・形編より試算
*2 小売物価統計調査「主要品目の東京都区部小売価格」平成30年8月分(総務省統計局)
*3 「石油製品価格調査の結果」平成30年9月20日14時公表分(経済産業省エネルギー資源庁)

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