国によりこんな違いが。
あなたならどこに住みたい?

医療・福祉

人々が幸せに暮らしていくために共通で必要なものでありながら、国や地域によって意外と内容が異なっている医療や福祉の制度。今回の調査でも、それぞれ似通った面もたくさんある一方、かなり違う点も見受けられました。もちろんどこの国の制度が正しいというものではありませんが、「この国の制度はいいな」と感じるところもあるでしょう。

スウェーデンの医療体制は、ハード・ソフトともに不足!?

まずは、病院、薬局の数が十分に足りているかを、それぞれの国(地域)に住んでいる皆さんに聞いてみましょう。

病院、薬局ともに十分に足りているとの回答があったのは、フランス、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国。

公立病院は足りませんが、私立病院は足りています」(イタリア)

公立病院は足りていません」(香港)

イタリア、香港については、私立病院は足りているものの、公立病院が足りないとの報告が届いています。

唯一、やや心配な状況にあるのが、スウェーデン。

小さな診療所は足りている一方、大きな病院は明らかに足りません。看護師不足も重なり、大変な状況です」(スウェーデン)

福祉国家として有名なスウェーデンですが、医療体制に関してはハード、ソフトともに不足している側面があるもよう。

パリは薬局が非常に多く、十分に足りています」(フランス)

薬局はとにかく多いです。多すぎると感じるほど」(ドイツ)

かなり多い」(アメリカ)

数年前に民営化され、ものすごく数が増え、近年は淘汰されつつあります」(スウェーデン)

薬局の数に関しては、すべての国・地域で「足りている」という回答が得られました。場所によっては、「少々多すぎる」と感じられるよう。それでも、「少なすぎる」と不安を抱くよりはよいのかもしれません。

手間がかかるフランス、便利なオーストラリア

次に、住んでいる地域の公的医療保険について、皆さんに尋ねました。
最も多かったのが、日本と同様、社会保険を財源とし、医療サービスの提供者には公的機関と民間機関が混在するBの「社会保険」モデル。フランス、ドイツ、イタリア、香港が該当しました。

それに続くのが、税金を財源とし、医療サービスの提供者は公的機関が中心であるAの「国営医療」モデル。採用しているのは、スウェーデン、ニュージーランドです。

また、アメリカは、民間保険と財源とし、医療サービスも民間機関が中心となって行われるCの「市場」モデル。オーストラリアは、税金を財源としながら、医療サービスの提供者は公的機関と民間機関が混在するAB混合タイプでした。

さらに、それぞれの国・地域の医療に関して、もっとくわしく教えてもらいましょう。

フランスの医療制度の特徴は、分業制が徹底されていることです。診察、薬、検査を受ける場所がそれぞれ独立しており、非常に手間がかかります。それに加え、その都度、料金も支払わなければなりません。最初に自分の主治医(Médecin Traitant)の元へ足を運び、主治医の判断で処方箋や検査の指示を受けたり、専門医や総合病院の医師を紹介したりしてもらいます。日本でのように、初診で公立総合病院などの専門医にかかることはできません」(フランス)

それは、確かに大変そうです……。

日本のように、症状や問題のある部位によって病院を使い分ける必要がなく、GPという一般病院ですべての症状を診てもらえます。ただし、その分、医師の専門的知識はやや少ないかもしれません。GPはショッピングセンター内にあり、週末も営業しているので、休日に急に病気になっても受診できるのが便利。薬局の営業も同様です。薬に関しても、処方箋にたいていリピートが付いているため、最初1週間分の薬で治らない場合、再度病院に行かなくても追加の薬を購入できるのはありがたいです」(オーストラリア)

こちらは、とても便利ですね!

イタリアはホームドクター制度なので、何はともあれ、まずはホームドクターを受診し、紹介状を書いてもらうところからスタートします。ホームドクター制度は、良いドクターであれば携帯で連絡も取れるし便利、そうでなければ受診時間がほとんどなく行列しなければならないようなケースもあります」(イタリア)

詳細はそれぞれ異なりますが、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドといった国々では「ホームドクター制度」が採用されているようです。一方、フランス、香港では、「かかりつけ医制度」が採用されているとのこと。

スウェーデンほど深刻でないにせよ、ほかの国の医療制度にも問題がないわけではありません。

イギリスと同じような仕組みで、公共医療が無料なのは良いのですが、たとえば手術などに待ち時間があるのは問題だと感じています」(ニュージーランド)

公立の医療機関は診療費が安価である一方、待ち時間が長いです。また、公立の産婦人科は、ベッド不足。私立の医療機関は診療費が高いものの、勤めている会社が負担してくれることも少なくありません」(香港)

主治医制度が推奨されており、主治医の紹介状を持って専門医の元へ赴かなければならず、時間がかかります。主治医の紹介状がないと、診療費も割高に。また、予約制で、1〜3カ月待ちは当たり前。緊急の場合は、緊急センターに行くしかありません。緊急診察に関しても、特別料金がかかります」(フランス)

公的医療サービスは整えられていますが、予約が取れてもそこから長い間待たされるなど、状況は散々です。私立病院は待ち時間が短い一方、医療保険が利かないため、診療費が高額になりがち」(イタリア)

年金の受給開始年齢は、世界中でほぼ変わらず

医療制度の次は、老後にかかわる福祉制度についても、それぞれの国、地域でどのようなシステムで運営されているかを尋ねました。

介護保障のタイプは主に3種類に大別され、最も多いのがBの「基礎的自治体が全住民を対象に、税財源により実施する社会サービスの一環として行う」モデルです。全体の半数以上、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が、このモデルに該当しました。

Aの「社会保険により行う」モデルを採用しているのは、フランス、ドイツの2カ国。日本も、こちらのモデルですね。

公的医療保険に関してわが道を行くアメリカは、ここでもCの「その他のモデル」に唯一該当する国となっています。

年金の受給開始時期についても教えていただきましょう。

「60歳の誕生日の翌月分から受給可能」(フランス)

個人で選ぶことができます。障害を持っているなどの理由があると、早期年金対象者になり、かなり若い年齢からもらうことも可能です。一般的には65歳が多く、少し早くもらう人もいれば、遅くもらう人もいます」(スウェーデン)

『Superannuation』といわれる自分で運用している年金は、60歳になれば使えます。一方、『Pension』といわれる『Super』とは別の政府から支給される年金は、日本と同様に生まれた時期により異なり、世帯年収などの給付条件もあるものの、1957年生まれ以降は67歳から給付されます」(オーストラリア)

そのほか、イタリアは63歳3カ月、アメリカ、ニュージーランド、香港は65歳、ドイツが67歳。日本も基本的には65歳で、受給開始時期の繰り上げや繰り下げができることからも、年金の受給開始時期については世界中どこでもほとんど変わらないようです。

スウェーデンでは、独身の年金生活者は大変

皆さんがお住いの地域の年金生活者の暮らしぶり、印象を聞きました。もちろん、すべての人がその通りだとは限りませんし、国内での地域差、報告してくれている方の環境なども考慮しなければなりませんが、それぞれの国、地域の一面が垣間見えます。

全体的に余裕があって、楽しそうに見えます。リタイア後も、旅行や文化活動、ボランティアなどに参加するなどして、皆さん、アクティブな様子です」(ドイツ)

基本的には、過去に投資などで貯蓄を増やして、それを使って暮らしているイメージです。低所得者用住宅なども用意されているため、年金生活に入って突然生活が苦しくなる人は、私の周りでは見たことがありません」(アメリカ)

幸せそうです。トレッキングコースも充実しているし、ゴルフは安いし、自然もたくさんあるので、ゆったりと暮らしていらっしゃいます」(ニュージーランド)

裕福層が住む地域なので、非常に余裕があり、バカンス用の別荘を複数持っている人が多いです。そのため、常にバカンスに出かけていて、パリにはあまりいません。年金ではなく、代々受け継がれた財産で暮らしている印象を受けます」(フランス)

自分自身で運用している年金に関しては、将来設計を立てて運用しているので、あまり困っていなさそうに見えます。相続税がなく、受け継いだ持ち家はそのまま子孫に残せるため、ほとんどの高齢者が持ち家で、住宅に関してのローンや賃料を負担しなくてよいことも余裕につながっているのかもしれません」(オーストラリア)

多くの国々では、国の制度や個人の蓄え、備えが相まって、年金生活者も余裕をもちながら人生を謳歌できているよう。

しかし、バラ色の老後とはいかない国や地域もあるらしく……。

MPF制度(香港の確定拠出型の年金制度)が2000年に導入されたばかりなので、実際のところはまだわかりません。貧富の差があり、投資などをしていた人は余裕がありますが……」(香港)

年金だけで暮らしている場合は、生活は相当苦しいのではないでしょうか」(イタリア)

生活が苦しい人が多く、特に独身者は大変だと耳にします。夫婦など、二人以上で暮らしていれば家賃等の面での負担も相応ですが、そうでない場合はやはり年金だけでは生活が苦しくなります。貯金をするという習慣があまりないこともあり、お金が足りなかったり、定年してからも働き続けたりする老人も少なくありません。独身で年金が足りないときには、市に申請すれば、住宅補助などは出ますが……。また、持ち家に住んでいると広くて手に負えないけれど家賃がかからない、引っ越せば税金も家賃もかかるという状況から、老人が家をなかなか手放さず、住宅難がいっそう進む悪循環も生じています」(スウェーデン)

どこの国や地域に住んでいようとも、どんな家族構成であっても、ゆとりのある老後を送るためには、しっかりと備えをしておく方がよさそうです。

医療、老後以外も!世界福祉制度のあれこれ

最後は、医療、老後以外に関する福祉制度に関する情報についても、お届けしましょう!

社会保障は充実しています。留学生でも申請できる住宅手当や、子どもの多いフランスではその数に応じた家族手当が給付されます。失業保険は、自主退職ではなく、解雇されたことが条件ですが、最大で3年間給付されます」(フランス)

児童手当金や失業給付金があり、後者に関しては最初の3カ月は給与の100パーセント相当額を受け取れます」(ドイツ)

失業給付は手厚く、給与の8割相当額を受け取れるようです」(イタリア)

子どもがいれば、どの家庭のどの子にも、1人につき1カ月当たり14,219円(1050クローネ)の児童手当金が給付されます。子どもが複数いる場合には、加算もあります。育児手当金は、1年以上勤務していれば給与の約8割の相当額、働いていなくてもいくらかの金額を受け取れます。子どもが病気になって、仕事を休んだときに給付される看護手当金も、同様に給与の約8割の相当額です。片親だったり、障がいを持つ子どもがいたりする手当金が支払われ、住宅補助も一般的。とにかく、社会保障に関しては充実していますね」(スウェーデン)

出産手当金、育児手当金、失業給付金などが受け取れます。家族手当に関しては、手当というより、自分の病欠で使える休暇を家族の介護や看病に回せる制度といったところでしょうか」(オーストラリア)

失業給付は、真剣に仕事を探していないと受け取れないようです。児童手当金は、収入に応じて給付されます」(ニュージーランド)

今回の調査では、社会保障の手厚い国の方が年金生活者の生活は苦しそうだという、少々皮肉な結果に。しかし、医療や福祉の制度は、人々が幸せに生きていくうえで、けっして欠かせないもの。財源など、難しい問題もあると思いますが、うまくバランスを取りながら、世界中の多くの人々がその恩恵を受けられるようになるといいですね。

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