スウェーデンでは、
家を借りるよりも買う方がラク?

住宅事情

「大人未来ラボ」第2回目は、各国の住宅事情をレポートします。日本国内でも地域によって賃貸のシステムや畳のサイズが違ったりするのだから、世界レベルでみればさらに驚くような住宅事情や、それにかかわる慣習があるかもしれません。

「持ち家比率」が最も低いのはどこ?

まずは、それぞれの国(地域)での世帯ごとの「持ち家と貸家の比率」を、住んでいる皆さんに大体の感覚でお答えいただきました。

持ち家が多いと感じられる国は、イタリア、オーストラリア、スウェーデン。
年代、社会階層にもよるかと思いますが……(イタリア)
郊外の住宅地というロケーションということもあると思います(オーストラリア)
などの条件付きではあるものの、
イタリアでは80%、オーストラリアでは70%、スウェーデンでは60~70%との数値が届いています。

持ち家と賃貸の比率が半々と思われるのが、ドイツ。そこからアメリカ40%、フランス30%、香港20%と、持ち家の比率は下がっていきます。もっとも、アメリカはニューヨーク、フランスはパリが調査地点で、ともに世界的な大都市である点は考慮すべきでしょう。

ちなみに、都道府県別で日本で最低となる「東京都」の持ち家率は、45.8%(2013年)です*1。

東京都の半分ほどの面積の土地に約729万人(2015年7月)*2もの人が住む香港からは、
海外からの投資家が多く、在住者の持ち家は2割程度だと思います。大卒の平均給料で家(フラット)を買うのに18年働いてやっと頭金が用意できるという統計も出ています
との報告が。

また、ニュージーランドからは、
持家の比率は分かりませんが、ニュージーランドでは家の価格も、貸家の家賃も高いです。家の値段がずっと上がり続けており、持っているだけで資産が増えるため、頭金が貯金できたらファーストホームを買う傾向にあります
との回答がありました。

国が広ければ住宅も広い!オーストラリア

次に、一般的な持ち家の延べ面積について尋ねました。こちらも、
地域によって大きく異なると思います(オーストラリア)
駐在員が多く、“一般”の定義が難しいですが……(香港)
10~300平方メートルまでさまざまなアパルトマンがあり、裕福層とそうでない層の差が激しいので、平均を出すのは難しいと思います(フランス)
などの条件付きですが、ひとまず発表しましょう。

最も広かったのがオーストラリア。なんと、約350~600平方メートル!
そして他の国々では、どうでしょうか?

夫婦に子ども二人の家庭が一般的なので、4LDKくらいで150~200平方メートル程度が多いのではないでしょうか。ただ、母子、父子家庭も少なくありません。そうなると、もう少し小さめになります(スウェーデン)

日本のように同じ間取りのマンション自体が存在しないので、たいへん幅のある状況ですが、100〜150平方メートル前後が一般的なサイズかと思います(イタリア)

ここまでが、100平方メートルをかなり超えている国々です。

100平方メートル前後の国も多く、アメリカが約104平方メートル、ドイツが約100平方メートル、フランスが約90~100平方メートルとなっています。
最も狭かったのが、香港の約65~84平方メートル(700~900平方フィート)。参考までに、東京都の持ち家の延べ面積は90.7平方メートル(2013年)*1です。

持ち家率が低いばかりでなく、持ち家の延べ面積もダントツで狭いのが香港でした。中国の特別行政区で、もともと土地が限られているのだから、それもやむを得ないのかもしれません。

複雑怪奇?なスウェーデンの賃貸契約

貸家についても知りたいところです。一般的な貸家の家賃の相場は、どれくらいなのでしょう?

パリは20区から成り立っており、区によって家賃が異なります。ごく一般的な人々が住む14、15区あたりでは、40~50平方メートル(サロン+2ベッドルーム)で約195,000~234,000円(1,500~1,800ユーロ)、30~40平方メートル(サロン+1ベッドルーム)で約156,000~195,000円(1,200~1,500ユーロ)、20~25平方メートル(ワンルーム)が約104,000円(800ユーロ)です。家賃が高い6、7区では、これより3〜5割高くなり、家賃が安い13、19、20区ではこれより2割ほど安くなります。 パリは家具付きのアパルトマンも多く、家具付きは家具なしに比べて家賃が高く設定されています(フランス)

Studio(広めの1K)が約180,000円〜、1LDKは約230,000円〜、約2LDKは280,000円〜。ドアマン、ジム付きのモダンアパートだと、さらに高くなります(アメリカ)

住むエリアによって、かなり差があります。約65~84平方メートル(700~900平方フィート)、3ベッドルーム、2バスルームのフラットで、286,000円(20,000香港ドル)くらい(香港)

100平方メートル前後(2〜3部屋+キッチン+バス・トイレ)で、高級住宅街であれば約130,000~156,000円(1,000〜1,200ユーロ)。旧市街ですと、104,000円(800ユーロ)前後です。50平方メートル程度(1部屋+リビングダイニング+バス・トイレ)で、旧市街なら、約39,000円~52,000円(300〜400ユーロ)。不動産会社を通さず直接賃貸するケースも多く、その場合はもっと安く借りられます(イタリア)

100平方メートル3LDKで、約130,000~195,000円(1,000~1,500ユーロ)(ドイツ)

フランスやアメリカについては、調査地点がそれぞれパリ、ニューヨークということもあり、家賃は東京と同程度、もしくはいくらか高い印象を受けます。持ち家の項でも住宅事情の厳しさが見てとれた香港も同様。イタリア、ドイツに関しては、もちろん国内での地域差はありますが、同じ金額で倍くらいの広さの貸家に住めそうです。

一軒家(4ベッドルーム)で週約53,000円~62,000円(600~700豪ドル)、アパートの2ベッドルームが週44,300円(500豪ドル)、1ベッドルームが週35,400円(400豪ドル)程度(オーストラリア)

個人的な感覚になりますが、2LDKで週約25,000円(300NZドル)~でしょうか(ニュージーランド)

オセアニアの2カ国で気になったのは、家賃の相場もさることながら、それが「週単位」であること。契約期間は両国とも1年以下が一般的で、月ごと、長期、期間を決めないなどのオプションがあるそうです。

さらに複雑極まりない住宅賃貸システムを採用しているのが、スウェーデンでした。

スウェーデンでは、貸家が極端に少ないため、貸主から直接借りる「第一契約」をとることがたいへん難しく、「第二契約」とよばれる、いわゆる「また貸し」が一般的です。第一契約をとるには長い順番待ちをしなければならず、例えばストックホルムなどの大都市なら、子供が生まれたときに並ばないといけないといわれるほど。また貸しの貸家の相場は年々上がっており、うちのあたりでも第一契約の場合で100平方メートルの3~4LDKくらいが約135,000円(10,000クローネ)、また貸しの場合はこの2割増し程度が一般的です。ただ、1LDKだから値段が安いということもあまりなく、ストックホルム市内であれば108,000~271,000円(8,000~20,000クローネ)ほどでしょうか。また貸しは2年までしかできず、2年以上同じ人に貸すと借りている人に第一契約が移ってしまうため、2年になる少し前に契約を打ち切られ、引っ越さなければなりません(スウェーデン)

スウェーデンの賃貸住宅事情は複雑怪奇 © Copyright 2017 Swedish Institute and Visit Sweden.

保証金、仲介手数料などのルールは大同小異

敷金、保証金、不動産仲介手数料などの慣習は、日本だけのものなのでしょうか? それとも、各国共通のルール?

保証金とセット、あるいはそれらがひとつになったものでなく、明確に「敷金」で報告があったのは、イタリア1カ国のみです。

敷金として1カ月分、礼金として1カ月が相場。ケースバイケースですが(イタリア)

「敷金・保証金」とセットで扱われているのがフランス。

不動産業者によって設定は異なりますが、仲介手数料は家賃1カ月分+付加価値税20%、敷金・保証金は家賃2カ月分くらいでしょうか(フランス)

「敷金」ではなく、「保証金」があるのが、アメリカと香港。ともに、不動産仲介料も支払う必要があります。

仲介手数料は年間家賃の15%、保証金は家賃2カ月分です。ただし、保証金は退去時に全額返金されます。敷金はありません(アメリカ)

不動産業者により料金設定は異なりますが、仲介手数料はあります。保証金は、家賃2カ月分です(香港)

オーストラリア、ニュージーランドのオセアニア両国は、保証金の支払い方法が他国と少々異なっています。

借主側が不動産業者に支払う仲介手数料はありません。一般的にBondと呼ばれる保証金の相場は家賃の4週間分です(オーストラリア)

仲介手数料は、借主が家賃1週間分を払います。敷金はありません。保証金は、国の機関が預かり、退去時に何も問題なければ返金されます(ニュージーランド)

賃貸契約のシステムが独特なスウェーデンは、敷金、保証金、仲介手数料などはないのが一般的。

不動産業者を通すのは、売買契約のみです。そのため、貸家は個人で探し、各地域にある貸家組合で順番待ちをします。保証金、敷金はない場合がほとんどですが、組合によっては1カ月分の家賃を前払いするケースもあります(スウェーデン)

多少の違いはあるものの、敷金、保証金、不動産仲介手数料などの慣習は世界各国にあるようですね。

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各国別お住いの地域の住宅事情あれこれ

私が住んでいるのは、サンジェルマン・デ・プレ地区。環境も交通の便もよいのですが、その分、家賃が非常に高いのが難点。また、パリは古いアパルトマンが多いため、水道管の老朽化が進み、ひんぱんに水漏れするのが困ります(フランス)

1600年代~1900年代初頭の建物が多いため、ガス、水道、電気の配線が弱く、トラブルに悩まされがちな点は不便。一方、内装自体がアンティークなこと、石造りで間取りが自由に変えられるのは魅力です(イタリア)

持ち家に関しては、近年バブルの傾向があり、価格が急上昇しているのが気にかかっています。貸家については、もともと数が少ないうえに、移民の影響もあって人口が増加し、万年住宅不足気味。そのせいで、若者がなかなか親元から離れられなかったり、闇マーケットや詐欺が多発したり、問題が山積みです(スウェーデン)

キッチンの冷蔵庫、ガス台などは貸す側が用意し、水道料金についても貸す側が支払うのが一般的なので、賃貸の場合はそれが利点。ただし、多くの建物が築80年近くと古く、水道管の関係で各戸ごとに洗濯機を置けず、ランドリーに行かなければならないのは面倒(アメリカ)

住宅の価格が上昇し続け、初めて家を買おうとする人が手を出しにくい状況になっています。古い家でも改装すれば価値を高められ、持っているだけでも家の価格が上がるため、生活スタイルに合わせてどんどん住み替えていけるのはよいところ。DIYが盛んで、改装する人もとても多いです(ニュージーランド)

フラット(高層マンション)住まいが主流で、受付や門番がいるところも少なくないので、防犯面では安心。備え付けのクローゼットがない場合には、部屋がさらに狭くなってしまいますが……(香港)

各国の住宅事情にはさまざまな特徴があり、それぞれ一長一短といえるでしょう。以前から気になっていた国の住宅事情に関して、あなたの評価はどうでしたか? この先海外への移住も検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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